しかも、「三輪そうめんの池利」は、ウェブサイトによれば、「大正13年昭和天皇御成婚、昭和3年嚝古(こうこ)[=前例のない]の御大典(ごたいてん)、昭和7年大和平野(やまとへいや)[=奈良盆地]での大演習行幸(だいえんしゅうぎょうこう)の砌(みぎり)前後3回にわたりまして、 弊社謹製(へいしゃきんせい)素麺を献上。以来毎年、皇居をはじめ各宮家(かくみやけ)の皆様にご嘉納(かのう)頂(いただ)いております」とのことである。
日本小麦(にほんこむぎ)は中力粉(ちゅうりきこ)や薄力粉(はくりきこ)に分類されるもので、外国品種の強力粉(きょうりょくこ)と較(くら)べて、グルテンが少ない。当然のことながら、グルテンが少ないと日本小麦(にほんこむぎ)を用いて、素麺や饂飩(うどん)を作れば、強力粉の場合とちがって、コシが弱くなる。
だから、江戸時代の素麺や饂飩は、現在、多数派を占(し)めるものよりも、コシが弱かった。
かつての三輪素麺の標準的な太さは、日本小麦で生産できる限界の細さであった。その伝統を守り続けていた。素麺発祥(そうめんはっしょう)の地としての誇(ほこ)りもあったのであろう。
そこへ、外国品種の小麦を使って、揖保乃糸(いぼのいと)が擡頭(たいとう)した。
三輪素麺の太さは、冷麦(ひやむぎ)との差が小さく、揖保乃糸(いぼのいと)の細さが際立(きわだ)った。
すると、揖保乃糸くらいに細いほうが、素麺らしいと感じる人が増えた。
私自身は奈良県桜井市の近くにある和歌山県橋本市出身なので、子どもの頃(ころ)から、素麺といえば、三輪素麺であった。
あるとき、揖保乃糸が好きな友人に三輪素麺をご馳走(ちそう)したら、「なんや、この太さ、冷麦やんか」と言われたことがある。
一旦(いったん)、揖保乃糸の細さが、なんとはなしに、素麺の標準だと感ぜられるようになったらしい。
しかも、揖保乃糸は450以上の業者による協同組合の統一ブランドであり、組織力があるらしく、東京では三輪素麺は見かけることが少なく、コンビニエンス=ストアでは揖保乃糸ばかりである。
近所にある高級食材スーパーマーケットでは、揖保乃糸は3種類、販売されているが、三輪素麺は享保(きょうほう)2年創業の「三輪そうめん山本」のもので、3年間、蔵で寝かせた大古(おおひね)と呼ばれる「山本の土藏囲(どぞうがこ)い」(これは細麺(ほそめん))だけである。
揖保乃糸のおかげで、素麺は細ければ細いほどよいという傾向が出てきた。
すると、「三輪そうめん山本」は、0.3mmという超極細麺(ちょうごくさいめん)で、茹(ゆ)で時間30秒の「銘品(めいひん)白髪」[たぶん、「しらが」ではなく「はくはつ」と読むと思う]や茹(ゆ)で時間1分の極細麺(ごくさいめん)の「白龍はくりゅう」を販売するようになったが、しかし、長崎県の業者に委託生産(いたくせいさん)してもらっているので、「三輪素麺」と称(しょう)することはできない。
こうした細さの闘(たたか)いの一方で、徳島県つるぎ町半田(はんだ)地区の半田素麺(はんだそうめん)は、素麺は1.3mm以下であるはずなのに、1.4mmから1.6mmの太めの素麺を製造している。
茹(ゆ)で時間が、3分30秒から5分というのは、もはや素麺とは言えないのではないかと思うのだが、これはこれで、個人的に好きだ。
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