神戸女学院大学は、関東でいえば、フェリス女学院大学のようなものである。
附属の中学校・高等学校はすこぶる頭がよいのだが、だれも大学にエスカレータ式で上がったりはしない。あくまでも、附属の中学校・高等学校と較べたらという話だが、それほど勉強が得意というわけではない。でも、お嬢様度は抜群(ばつぐん)である。
神戸女学院大学の指定校推薦枠(していこうすいせんわく)が、私の出身高校にはあった。
一般の高等学校では、指定校推薦枠があるというのを掲示板に貼(は)り出し、希望者は締切日までに申し出るようにとの通達を出すものである。
その上で、それぞれの高等学校の選抜方式により、指定校推薦を受けられる生徒が決まる。
ある場合には、定期試験の成績だけで決める高等学校もあれば、定期試験と実力試験の結果のそれぞれに一定の係数をかけて、その合計で決める高等学校もある。
ところが、私の出身高等学校である和歌山県立橋本高等学校では、神戸女学院大学の指定校推薦枠があるということは一切、公表されず、富裕層で、かつ家柄のよい女子生徒のうちで、成績のよい順に、三者面談などで、こっそりと、指定校推薦を利用するかどうかを打診していたらしいのである。
このことを知ったときは、あれほど同和教育に力を入れておきながら(和歌山県は、20人に1人はそういう地域出身者になるので、経済を活性化するためにも、同和教育は必要である)、こんなことをしていたとは呆(あき)れるなと思った。
しかしながら、もしも、勉強はそこそこ以上にできるけれども、貧乏な家の子どもが神戸女学院大学に進学すれば、どうなるかを考えれば、納得できなくもない。
以下は、首都圏のお嬢様大学での事例である。
貧乏な子どもがお嬢様大学に進学すると、日本特有の同調圧力(どうちょうあつりょく)により、服装も似たようなものにしなければならないが、経済力が違いすぎるから、対応できない。だから、周囲から浮いた貧乏臭い服装になってしまう。
昼食は500円以内に抑(おさ)えようと思っても、1食1,500円のランチに誘われる。週3回でも貧乏学生には辛(つら)い。早稲田大学ごときでも、昼食時に大学近辺の高くはないけれども、安くはないレストランに誘われたりしているうちに、生活費が足りなくなって、夕方に3時間ほどアルバイトを始めた女子学生がいたくらいであるから、真(しん)のお嬢様大学なら、もっとひどい状態になるんだろう。
ローテク=シューズであるコンバースのオール=スターを履(は)いていくと、その日のうちに渾名(あだな)が「コンバ」になってしまう。
「夏休みにヨーロッパの美術館巡りをするんだけど、一緒に来ない?」と誘われても、参加できない。その結果、仲間はずれにされる。「あの人、つきあいが悪いから」となる。
なんだか古臭い腕時計をしていると思ったら、「お祖母様(ばあさま)のローレックスを譲ってもらったの」と言う。うちは昔から金持ちなのだとアピールしているのである。
以上のことを鑑(かんが)みるに、家柄のよい富裕層の女子生徒にしか指定校推薦を受ける権利を与えていない、あるいは、与えていなかったのは、致し方(いたしかた)ないと思えてくる。
ちなみに、うちの高等学校では、ひと月に1回、1時限を被差別部落の問題などに関する討論
(とうろん)に費(つい)やし、1年に1回、1日まるごと、被差別部落の問題などに関する討論に費やしていた。
被差別部落出身者の場合、高校の授業料は無料だったし、自動車教習所の費用も無料だった。経済格差を減らすためだ。
さらには、真偽の程は不明だが、被差別部落出身者は、教員や公務員の採用で優遇されているという話を耳にしたことがある。
それでも、名門お嬢様大学の指定校推薦に関しては、進学実績を維持するために、あれほど不当な差別はいけないと力説していた教員たちが屈伏(くっぷく)せざるをえなかったというのは、興味深い。富裕層を優先的に推薦するのは、「正当な差別」ということなのだろうか?
成績がよいからといって、貧乏な人を推薦した結果、その人がいたたまれなくなって、単位を落としたり、落第したり、中途退学したりすると、指定校推薦を取り消されるのだから、しょうがないかな。
なお、同級生で、指定校推薦で神戸女学院大学に進学した人は、元=庄屋(しょうや)の家柄で、今でいえば「村長」の家柄だったし、2学年下の女子生徒の場合、オートバイで彼女の自宅に遊びに行ったら、東京の平均的な場所で同じものを作れば土地代込みで10億円は超えそうな邸宅だった(ただし、関西は土地代が安いので、資産価値はそれほどではない)。
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自己紹介
- 掃除機庵主人
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- 早稲田大学第一文学部哲学科哲学専修卒業、「優」が8割以上で、全体の3分の2以上がA+という驚異的な成績でした。大叔父は競争率180倍の陸軍飛行学校第1期生で、主席合格・主席卒業にして、陸軍大臣賞を受賞している。いわゆる銀時計組であり、「キ61(三式戦闘機飛燕)の神様」と呼ばれた男である。苗字と家紋は紀州の殿様から授かったものである。
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