『えんぴつで奥の細道』という書籍(しょせき)の存在を知った。
高名な書家が『奥の細道』の文章を書いたものを、薄く印刷してあって、それをなぞり書きするというものである。
シリーズ累計で150万部を売り上げたという。1冊1,000円とすると、出版社の取り分はそのうちの50%、つまり500円である。すると、500円×150万部=7億5千万円となる。
うーん。
『えんぴつで奥の細道』の最初の単行本がポプラ社から出版されたのは2006年1月1日である。
それに先立って、『書き込み式「般若心経」練習帳』が成美堂出版から2005年8月26日に出版されている。「般若心経」は真言宗やいくつかの宗派で重視されるものの、写経そのものは、それほどメジャーではない。
しかしながら、『えんぴつで奥の細道』はヒットしたようである。その結果、『奥の細道』以外の有名古典でも、なぞり書きシリーズを刊行し、累計150万部となった。
ところで、当校でもなぞり書きのプリントは10年以上も前から、作成していた。
最初は、小学生の漢字の書き取りの練習として作成した。
漢字が苦手な男子生徒は、手本を見ながら、そのとおりに書くことができない。止め・撥(は)ね・点をきちんと見て取ることができない。それで、なぞり書きプリントを作成したのである。
まもなく、中学生や高校生に向けて、古典のなぞり書きプリントも作成するようになった。学習にかかる負担・時間が減るのだ。『小倉百人一首』のなぞり書きプリントも作成しているが、これも刊行されていた。
また、国語の小説などでも、なぞり書きプリントを作成すると、軽い自閉症の子どもの成績も上がる。
ところが、そんなものが一般向けの商品になるとは思いもしなかった。
『奥の細道』程度の作品であれば、研究レベルとなると話は別だが、表面的な意味だけを汲(く)み取って読む分には、古文の文法を学びさえすれば、註釈を見ながら、独力で読めるようなものなので、『えんぴつで奥の細道』のようなものが商品として成立するとは思いもしなかったのである。
ちなみに私は高校1年生のときに『奥の細道』は原文で読んだ。
それにしても、私にはこういうものがヒットしたというのが信じられない。一般の日本人は、それほどまでに教養がないのであろうか?
それにしても、『えんぴつで奥の細道』を仕掛けた編集者は、じつに大したもんだ。私はそれ以前に、なぞり書きプリントを作成していたけれども、学習用以外で商品になるとは思いもしなかったもの。
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自己紹介
- 掃除機庵主人
- 和歌山県, Japan
- 早稲田大学第一文学部哲学科哲学専修卒業、「優」が8割以上で、全体の3分の2以上がA+という驚異的な成績でした。大叔父は競争率180倍の陸軍飛行学校第1期生で、主席合格・主席卒業にして、陸軍大臣賞を受賞している。いわゆる銀時計組であり、「キ61(三式戦闘機飛燕)の神様」と呼ばれた男である。苗字と家紋は紀州の殿様から授かったものである。
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