およそ100年前に絶滅したとされる日本狼(ニホンオオカミ)の末裔(まつえい)というおおかみおとこに出逢い、交際を始める。
子どもを身籠(みごも)り、大学を休学し、おおかみおとこの「彼」と一緒に子どもを育てることにする。
子どもは年子(としご)でふたりいた。姉は雪の日に生まれたので「雪(ゆき)」と、弟は雨の日に生まれたので「雨(あめ)」と名づけられた。
ところが、おおかみおとこの「彼」は川で溺(おぼ)れて亡くなり、おおかみの姿をしていたので、清掃局の人々によって、袋詰(ふくろづ)めにされ、ゴミ収集車に回収される。
子どもたちはことあるごとに、おおかみに変身してしまい、おおかみこどもの正体がばれることを怖(おそ)れて、富山県の山奥にある廃屋(はいおく)に近い築100年の古民家(こみんか)に、修繕(しゅうぜん)しながら住み始める。
半自給自足(はんじきゅうじそく)の生活を目指し、農業に手をつけ、最初はうまくいかなかったけれども、近所の人々に助けられる。他者(たしゃ)との交わりを拒絶(きょぜつ)するために、人里離(ひとざとはな)れた古民家(こみんか)に住むことに決めたのだが、いつしか、近所づきあいが深まる。
姉の「雪」とちがって、内向的(ないこうてき)な弟「雨」は学校生活に馴染(なじ)めず、山へと頻繁(ひんぱん)に出かけ、「先生」と呼ぶ老狐(ろうこ)に教えを受け、山で暮らすための技術を身につける。
ある日、姉の「雪」のクラスに転校してきた藤井草平(ふじいそうへい)に「ねえ、お前んち、犬、飼ってない?」と訊(き)かれ、「え、なんで?」と理由を訊(き)くと「なんか、獣臭(けものくさ)いから」と言われ、「雪」は草平を避けるようになる。
怪訝(けげん)に思った草平に問い詰(つ)められた際に、激昂(げっこう)した「雪」はおおかみに変身して、草平の右耳を傷つけてしまう。
ある集中豪雨(ごうう)の晩(ばん)、親が迎(むか)えに来ない草平と「雪」は学校に取り残される。「雪」は草平に自分がおおかみこどもであることを告白する。「わかってた、ずっと。『雪』の秘密、だれにも言ってない。だれにも言わない。だから……もう泣くな」と草平は答える。「今までだれにも言ったことがないんだ」と「花」に語ったおおかみおとこである「彼」のことばに呼応(こおう)する。
一方、弟の「雨」は、死期(しき)の迫(せま)った老狐(ろうこ)の「先生」の代わりとして、山で生きることを決意する。
豪雨の中、「雨」を心配した母の「花」は山へと「雨」を捜(さが)しに出かけるが、崖(がけ)で足を滑(すべ)らせる。以前、山翡翠(ヤマセミ)を捕(と)らえようとして渓流(けいりゅう)で溺(おぼ)れかけて姉の「雪」に助けられた「雨」が、母の「花」を助けるほどに成長していた。
「花」の意識が戻(もど)り、家に帰るように呼びかけるが、「雨」はおおかみの姿のままで山を駆(か)け登(のぼ)り、頂(いただき)で遠吠(とおぼ)えをする。
その翌朝、母の「花」は、集中豪雨によって綺麗(きれい)に洗い流された世界を「一夜にして生まれ変わった」と感じる。
翌年、中学に進学する際、「雪」は寮に入り、「花」はひとり、古民家で暮らすこととなる。
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