2013年3月1日金曜日

大黒鼠(だいこくねずみ)の幸村(ゆきむら)の脱走

 大黒鼠(だいこくねずみ)の幸村(ゆきむら)が脱走した。

 なお、大黒鼠はラットratのうちでも、白いものを指すらしいが、ラットというと実験動物のイメージが強いし、どぶねずみだとイメージが悪いので、私は個人的に色がついているものも大黒鼠と呼ぶことにしている。

 さて、幸村はうちに来たとき、半兵衛(はんべえ)と較(くら)べて身体(からだ)が小さかった。

 動作がすばしっこくって、あまり人間に馴(な)れていないようだったが、ちがっていた。

 どうやら、苛(いじ)められっ子だったらしい。12匹くらい子鼠(こねずみ)がいれば、母鼠(ははねずみ)のおっぱいが足りない。すると、弱い子鼠や苛められやすい子鼠はおっぱいが哺(す)えない。その結果、身体が小さくなる。

 苛(いじ)められっ子だったから、人間に限らず、接触されるのを嫌(いや)がる。

 半兵衛のほうは、そういうことがなかったらしく、懐(なつ)きやすいし、潑溂(はつらつ)として、籠(かご)から出したら、あちこちへと、謂(い)わば冒険をする。

 ところが、幸村は、全然、動き回らない。籠から出しても、すぐに籠を攀(よ)じ登って、巣に戻る。あとは、食べては寝て、食べては寝ての生活である。すると、初めは小さかった身体が、半兵衛よりも大きくなった。大きくなったとはいえ、ただのデブである。

 先日、籠を洗った。半兵衛は移動用の小さな籠に入れたが、幸村は、遠くまでちょろちょろと動きまわることがないので、床に放置しておいた。

 ついでに、空気の入れ替えのために、裏口のドアを開けておいた。すると、これまで、籠から30cm以上のところに行ったことがない幸村が裏口から逃げた。

 探してみたけれども、見つからない。うちの近所には野良猫(のらねこ)が多い。野良猫に餌(えだ)をやる婆(ばあ)さんがいるのだ。たぶん、野良猫に食べられたのだろうと観念(かんねん)した。うちは相当に贅沢(ぜいたく)な餌(えさ)をあげているから、野良猫にとっては、かなり旨(うま)かったのだろうと思った。

 その3日後、みょうな物音がした。幸村だった。屋外で幸村を探している間に、屋内に戻って、冷蔵庫の裏に隠れていたらしい。

 3日間、飲まず食わずだったので、へろへろな状態になっていた。毛艶(けづや)も悪くなっていた。

 暖かい籠の中にいて、食べ物と水が無尽蔵(むじんぞう)に出てくる状態が、どれほどしあわせなことかを噛(か)み締(し)めているようだ。

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和歌山県, Japan
早稲田大学第一文学部哲学科哲学専修卒業、「優」が8割以上で、全体の3分の2以上がA+という驚異的な成績でした。大叔父は競争率180倍の陸軍飛行学校第1期生で、主席合格・主席卒業にして、陸軍大臣賞を受賞している。いわゆる銀時計組であり、「キ61(三式戦闘機飛燕)の神様」と呼ばれた男である。苗字と家紋は紀州の殿様から授かったものである。

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