帝国海軍の航空部隊は、マレー沖海戦で、巡洋戦艦レパルスと、当時、世界最強とされた戦艦プリンス=オヴ=ウェールズとを撃沈した。
当時、作戦行動中の戦艦を航空機は沈められないと考えられた常識を打ち破ったのである。
プリンス=オヴ=ウェールズ撃沈の報告を受けた英国首相ウインストン=チャーチルは、思わず、電話の受話器を落とした。
作戦行動中の戦艦を航空機が沈められることを証明した帝国海軍が、航空機主体にならなかったのは、頭がおかしいと考えるようである。
ところが、マレー沖海戦に関して、当初、山本五十六は、レパルスを沈没させることができても、プリンス=オヴ=ウェールズは無理だと考えていた。プリンス=オヴ=ウェールズが撃沈されたのも、航空機から放たれた爆弾か、あるいは魚雷が、1発、いいところに「まぐれ」で当たったようである。
マレー沖海戦では、練達(れんだつ)の操縦士(そうじゅうし)が揃(そろ)っていたから、爆弾・魚雷の命中率は、低いわけではなかったけれども、戦争中、全体としての命中率は10%くらいだった。
資源がない、戦費(せんぴ)がない状態で、すこぶる高価な爆弾を浪費するわけにはいかない。命中率10%だと、航空機主体には、なかなか踏み切れるものではなかろう。
そうなると、相手の戦艦の射程距離外(しゃていきょりがい)から、つまり、相手から砲弾を浴びせられない安全なところから、砲弾を浴びせるという、所謂(いわゆる)大艦巨砲主義(たいかんきょほうしゅぎ)とならざるを得ない。それに、爆弾・魚雷よりも命中率は高かったであろうし。
アメリカ合衆国の航空隊は、戦艦大和を撃沈するために、400機近い航空機を繰(く)り出した。アメリカ側の資料では、魚雷58本のうち15本前後命中確実、爆弾77発のうち10発以上命中となっているが、一方、「軍艦大和戦闘詳報」によれば、魚雷10本、爆弾5発である。
アメリカ側の資料で計算すれば、
(15本+10発)÷(58本+77発)≒18.5%
となるが、「軍艦大和戦闘詳報」に基づけば
(10本+5発)÷(58本+77発)≒11.1%
となる。
戦闘機による掩護(えんご)のない大和を相手に、こんな命中率だというのは、日本側の資料が正しければ、航空機主体の戦闘は、経費(けいひ)の点で実に効率が悪いということになる。
それにしても、ヴェテラン=パイロットを損失し、未熟なパイロットが多くなった日本のトータルでの命中率とさほど変わらないというのは、アメリカ軍のパイロットの技量(ぎりょう)が低いということになる。
また、熟達したパイロットを失い、練度の低いパイロットが多くなった1944年あたりでは、爆弾・魚雷の命中率は、10%以下であったろうことは想像に難(かた)くない。命中率の低さを補うための大量の物量作戦が実施できない帝国軍は、海軍による神風特別攻撃や陸軍航空隊の振武隊(しんぶたい)による特別攻撃をするしかなかったのは仕方のないことだろう。
いや、むしろ、最善の手段だったかもしれない。
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神風特攻隊は、本当は、きわめて有効で効率的な作戦なんじゃないかと思ったのだが……
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