長江中流域の重慶直轄市から湖北省宜昌市の一帯にある三峡ダムは、世界最大の水力発電ダムである。
三峡ダムの総貯水容量は39,300,000,000m³である。一方、黒部ダムの総貯水容量は、199,285,000m³であり、日本最大のダムである徳山ダムの場合、660,000,000m³である。
三峡ダムは、総貯水容量の点で、黒部ダムの197倍、徳山ダムの60倍である。
これほどの規模の三峡ダムが決壊すればどうなるか?
400億トンの水流・土石流が、下流域を襲う。
過去につぎのような事例があった。「板橋(ばんぎょう)ダム決壊事件」だ。中国では、「河南“75·8”溃坝事件」(繁体字だと「河南"75・8"潰壩事件」)と呼んでいる。
1975年8月3日に上陸した台風3号(Super Typhoon Nina、颱風尼娜)が8月5日から8日にかけて1,631mmの降水量を記録した。8月8日に板橋ダムのほかに大型ダム石漫灘ダムの2基が、ついで、中型のダム2基と小型ダム58基がつぎつぎに決壊した。
直接の溺死者が26,000人、洪水後の疫病の蔓延、餓死などで、数十万人以上の死者を出したとされる。
総貯水容量で三峡ダムの1,000分の17にすぎない板橋ダムで、以上の被害である。三峡ダムが決壊した場合の被害はどの程度になるのだろうか? 被害を1,000分の17で割って算出する程度では済まないだろう。
また、軍事面での懸念もある。巡航ミサイルをつぎつぎに撃ち込まれれば、三峡ダムは決壊し、下流域が土石流によって壊滅状態になってしまう。武漢・南京・上海が消滅してしまう。
この点から、台湾は、「中国が台湾を攻撃したら、三峡ダムをミサイル攻撃しろと、アメリカが指示している」という情報をウェブ上に流しているそうだ。
ところで、台湾が実際に三峡ダムを攻撃して、大規模洪水・土石流を引き起こした場合、日本の南西諸島や北九州西岸が津波に襲われる。
対岸の火事にならないな。