第2外国語はフランス語を選択した。大学でする予定の勉強に関しては、本来は、ドイツ語を選択すべきであったのだが、そうすると、おそらくは、フランス語にはまったく手を出さないだろうと思ったので、あえてフランス語を第2外国語にしたが、この選択は結果としては間違っていなかった。とりわけイギリスの上流階級はフランス語とラテン語を学習しており、上流階級の人々がしたためる文章には、どこかしら「フランス語的」なものがあって、ロンドンの下町の労働者階級の英語とは質が違う。英語でなにかを読む場合にも、フランス語の素養はいくばくかは必要なのである。
大学1年生のときには、夏休みなどを除けば、英語の原書などをだいたい200ページは読んでいた。必修の英語の授業のほかに、早稲田には「語学研究所」というものがって、学生はそこでハイレベルな英文を講読することができた(ただし、ふつうの学生は授業についていけないレベル)。
フランス語の授業でのメインとなる教科書は、「京都大学フランス語教室」が編集したもので、週2コマの授業で使用する教科書としては最も難しいレベルだったらしい。この件については、知ろうと思ったことはなかったが、こんなことがきっかけで知るにいたった。
同じクラスのフランス文学マニアの連中が、「こんなレベルの教科書をやっていて、大学2年生になったときに辞書さえ引けば原書でフランス語が読めるようになるのでしょうか? もし、そうでなければ、適切な参考書などを指示してほしい」と、とんでもないことを6月あたりに言い出しやがった。
私のように、英語とドイツ語の文献を読むのがメインで、フランス語はあくまでも「余技(よぎ)」である者にとっては、こうした発言をきっかけに、膨大(ぼうだい)な量のプリントが配布されて、学習量が格段に増したら、ちょっと困ると思った。
担当講師はちょっと困って、「これよりも難しい教科書はないんだが……」と答えていた。その流れから、フランス文学マニアくんたちの要望で、希望者を対象に、これだけをおさえておけば、夏休みに自力で簡単なフランス語のものが読めるように指導することになり、夏休み前(夏休み突入直後?)に、授業以外でその講師から接続法などを習い、アルベール=カミュAlbert Camusの『異邦人』L'étrangerを大学1年生の夏休みに、ペンギンブックスPenguin Booksの英訳と照らし合わせながら読んだ。
なお、大学1年生のときのフランス語の学習方法に関して、一般的な参考書なども読みつつ、授業に関しては律儀に予習復習をし、さらに、イギリス人向けのフランス語の入門書や文法書も紐解いた。最初の1冊目がA First Frenchとかいうタイトルだったと思う。ほかにもそうしたたぐいのイギリス人向けのフラン語の参考書を使って、時間の空いたときに英文をフランス語に、仏文を英語に訳すという作業もしていた。
ちなみに、1年生のときのフランス語の文法の教科書の仏文和訳・和文仏訳などについて、後期試験ように、答えを印刷したプリントを作成した。当時は、まだ、たいしたワープロすらなかったので、理工学部の大学院生のコンピュータを借りて、入力し、プリントアウトした。それを配布した。数年後、12月だか、1月だかに、大学に赴(おもむ)く用があって、足を運んだら、学生食堂で、自分が作成したプリントのコピーにコピーを重ねて、文字がいささかつぶれているプリントを必死で暗記してる学生を見かけ、ワープロで打ち直して、配布するやつがいないのかと呆(あき)れた。
大学2年生になると、ドイツ語の学習も始めた。1年生のドイツ語の授業に勝手に出席して、授業を受けることにしたのだが、名簿に載っていない学生がいると、目ざとく見つけられた。そこで、「友人から先生の授業は非常に素晴らしいと聞いたので、ぜひともドイツ語を習いたいと思い、勝手に出席しました」と嘘をついたら、たいそう喜んでくれた。本当は、時間の都合がよかっただけだったが、名簿の末尾に名前まで書き込まれ、毎回、出席をとられ、おまけに、前期試験・後期試験も受けさせられた。そのクラスで(非公式)1番だった。まあ、ハンディキャップ戦だからな。
英語を低くはないレベルまで勉強した上で、さらにフランス語の文法をひととおり学習してから、ドイツ語を習うと、「これは英語の〇〇に相当する」「これはフランス語の〇〇と一緒だ」という部分が多くなり、学習がきわめて容易になる。英語の学習にかかる時間とエネルギーが10とすれば、フランス語で同じレベルに達するには3くらいの時間・エネルギーで、その上でドイツ語を学習すると、1くらいの時間・エネルギーで済む。そのクラスでドイツ語を勉強していると、接続法なんかはすいすいと理解できるので、まるで自分の頭が格段によくなったという錯覚(さっかく)に陥(おちい)った。
大学3年生への進級時に専門外国語を選ぶ。ドイツ語を専門外国語にしようとしたが、1・2年次に履修した外国語でなければ駄目という規約があり、専門外国語はフランス語にした。
大学3年次に、フランス語の発音の訓練をなおざりにしていたので、発音を少しはよくするという目的のためだけに、1学期だか、夏休みだかに、日仏学院で、2番目にやさしいフランス語の授業を受けることにした。同じクラスに早稲田大学高等学院1年生の生徒がいたので、ちょっとびっくりした。
その学院生は、おやじにこんなことを言われたそうだ。
「数学と漢字の読み書きと英語とフランス語がちゃんとできれば、あとは、お前の好きなようにしてよい」
なぜ、フランス語?
学院生によると、もともと、最低限、数学と英語と漢字の読み書きができるだけで、世の中をわたっていけるというのが彼の親父の持論で、早稲田大学高等学院では高校1年生から第2外国語が学べる(あるいは、学ばなければならない)のだから、そのメリットも生かせ、ということで、「数学と漢字の読み書きと英語とフランス語がちゃんとできれば、あとは、お前の好きなようにしてよい」となったそうだ。フランス語を入れるのであれば、個人的には、ついで、物理も入れたいところだが。それから、漢文とかも。って、こんなことを言い出したら、すべてを学習しなければならなくなるな。
また、3年生からは、日仏学院の「上級仏文和訳」という通信添削も始めた。ところが、5回目で10点満点をとってしまった。私の悪いところは、満点をとると、モチベーションが上がるのではなく、むしろ、モチベーションが完全になくなってしまうところである。高校時代の話でも書いたが、高校1年生のときに始めた通信添削を、満点しかとれないということで、やめている。ただ、勉強方法としては、じつは、正しい。満点がとれるようだと、修正ポイントが少ないから、学力向上という点では無駄が多くなる。もっとも、性格によっては、満点をとることで調子づいて勉学に励むということもあるから、一概(いちがい)にはどちらがよいとはいいがたいが。
0 件のコメント:
コメントを投稿