このアイデアは、ドイツ語学習者のみならず、外国語学習者の間で、ちょっとした話題になった。「これ、思いついたやつはすごいわ」とだれもが思ったのだ。
外国語を学習すると、最初は、理不尽なやりとりを憶えなければならない。たとえば、日本語で書くと、つぎのような会話だ。
―これは何ですか?
―それは林檎(りんご)です。オレンジではありません。
ある程度の年齢以上になると、うんざりしてしまう。「いったい、林檎とオレンジの区別のつかないやつは、めったなことではいないだろうが!」と思ってしまう。
ところが、宇宙人を登場させると、すべての理不尽な会話が、全面的に正当化される。
―これは何ですか?
―それは灰皿です。煙草を喫(す)うときに使います。
人間同士の会話なら、「見てわからんのか、こら! いちびっとったら、あかんぞ!」となるところでも、「うむ、きっと、喫煙というものが存在しない星からやって来た宇宙人なんだろうな」と、納得してしまう。
―彼女は何をしていますか?
―彼女は彼と一緒にテニスをしています。
「テニスのない星から来た宇宙人なんだ」と、これまた、納得してしまう。
宇宙人を登場させるだけで、無意味に思える会話が、意味のあるものに転換するわけだ。だから、宇宙人を登場させることを思いついたスタッフのことを、だれもがすごいと思ったのだ。
1 件のコメント:
通りがかりです。懐かしいです。面白いです。思わず笑いました。学生時代を思い出します。ありがとうございます。ところで、その頃のドイツ語講座の出演者の中に、可愛い素人さんぽい学生が出演していたのですが、ご存知ないでしょうか。会話に一生懸命についていこうとする表情と、何よりも、その舌足らずな発音と可愛いタレ目が好きでした。ファンレターを出したところ、「その方は先日、ドイツ総領事館に就職なさいましたので、連絡が取れません」との葉書きをNHKさんから頂きました。ご返答を頂いたのにも感謝と驚きですが、番組でタドタドしい会話を披露しながら、ドイツ総領事館に勤めることができるなんて羨ましいわあ・・・と思ったのでした。
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