その一方で、頑(かたく)なに関西弁をしゃべり続けている連中が学内にはいた。勝手にしゃべっている分にはかまわないが、なかには「関西弁を普及する会」なんてものを作っているのまでいた。
関西弁は、共通語とちがって、イントネーションが正反対である。これが、一部の関西出身者が音声面で共通語を習得できない理由である。
大学時代に観察した結果では、関西弁を直せない人は、英語もフランス語も発音が下手だった。
「東京で関西弁をしゃべんじゃねえよ」などとは思わずに、「英語もフランス語の発音も下手なんだろうな、この人は」と、哀れんであげてもらいたい。
イントネーションが同じであれば、語彙(ごい)を変更するだけで共通語が話せるようになる。九州出身者で、それとわかる人がいないのは、こうした理由からであろう。
ドイツ語でも、関西弁にあたるものがある。
スイス方言である。ドイツ南部でも、同じように、標準ドイツ語とイントネーションが正反対でしゃべる地域がある。
ドイツの哲学者フリードリッヒ=ヴィルヘルム=ニーチェFriedrich Wilhelm NietzscheのNietzscheを、スイス人は、「ニーチェ」の「チェ」のところを上がり調子で発音する。日本語の共通語と関西弁と同じ関係が、ドイツ語では標準ドイツ語とスイス方言のドイツ語にあるわけだ。
ウェブで、ドイツ語圏のスイス人は、標準ドイツ語で話しかけても、スイス方言で答えると不平不満を洩(も)らしている人がいたが、たぶん、彼らは標準ドイツ語で話せないのであろう。そういう人たちの英語の発音には、それに応じた特有のものがある。
また、スイスのドイツ語圏出身の知り合いが、「おれたちはドイツ人のしゃべるドイツ語がわかるが、ドイツ人はおれたちのドイツ語がわからないんだぜ」と自慢していたが、なぜ、自慢になるのか、今でもわからないでいる。
一方、スイスのドイツ語圏在住のスイス人だとわからないくらいに英語の発音がうまい人は、私の少ない経験から、標準ドイツ語も話せるようだ。
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