2015年10月9日金曜日

脳梗塞(のうこうそく)になった近所のおじいさんの話

初めて目にしたとき、そのおじいさんは実にゆっくりと歩いていた。

買い物に出かけて、20分後に戻っても、5メートルくらいしか進んでいなかった。

そのおじいさんは脳梗塞で右半身が不自由になっていたようだった。

朝・昼・晩と、毎日、只管(ひたすら)、歩いていた。歩くことがリハビリであるようだった。

1年も経つと、歩く速度が随分(ずいぶん)と速くなっていた。

ある日、単車で走っていたら、「あのおじいさんがこんなところを歩いている」というのに出喰(でく)わした。信じられないくらいに遠くまで出かけていた。

こんなところまで歩いて来られるくらいになったのだなと感心した。

それから暫(しばら)くして、自宅に戻ったら、そのおじいさんはタクシーで帰宅した。

タクシーを使わないと戻つて来られないくらいに遠くまで歩いて行けるようになっているということに、私は大層(たいそう)感動した。

その後、そのおじいさんは、タクシーを使わないと戻れなくなるほども遠くに出かけたことに懲(こ)りたらしく、自宅周辺をぐるぐると廻(まわ)るようになった。

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自己紹介

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和歌山県, Japan
早稲田大学第一文学部哲学科哲学専修卒業、「優」が8割以上で、全体の3分の2以上がA+という驚異的な成績でした。大叔父は競争率180倍の陸軍飛行学校第1期生で、主席合格・主席卒業にして、陸軍大臣賞を受賞している。いわゆる銀時計組であり、「キ61(三式戦闘機飛燕)の神様」と呼ばれた男である。苗字と家紋は紀州の殿様から授かったものである。

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