水曜日
カミシャになついてほしかったので、並木道のまん中にミルクを入れたお皿を置きました。家の中に戻って、どんなことになるのか、窓から見ていました。
まず、クロードがやって来ました。クロードはお行儀よく前足をそろえて、お皿の前にすわり、ペチャペチャと音を立てて飲みました。しばらくして、カミシャ の白いあざのついた目が、草むらの間から現れるのが見えました。カミシャはおかあさん猫を眺めていましたが、おかあさん猫が何を考えているのかを考えてい るようでした。そして、カミシャは腹ばいになって進み、ゆっくりとゆっくりとクロードに近づきます。急いで、カミシャ! でないとお皿はからっぽになって しまいますよ。とうとう、カミシャはたどりつきました。でも、ミルクはすこし残っているだけです。カミシャはお皿のまわりを腹ばいのまま、ぐるぐるとま わっています。なんて、なつきにくい猫なんでしょう。本当に野生の猫です。カミシャはきりんみたいに首を長く伸ばしています。首を伸ばしているのは、でき るかぎりお皿から離れていたいからです。カミシャは首を伸ばし、顔をお皿に近づけると、突然、くしゃみをしたんです。くしゃみをするなんてことをカミシャ は思ってもみなかったようです。きっと、お皿を使ったことがなかったからでしょう。カミシャはあちこちにミルクのしずくをはねかけました。カミシャはあと じさりして、うんざりしたようすで、舌なめずりをしました。ミルクをはねかけられたクロードは、カミシャの失敗をあざ笑っているようです。クロードはてき ぱきと規則正しく、音を立てながら、ミルクを飲んでいます。機械みたいです。
カミシャは身体をふきおわりました。ミルクのしずくをなめているうちにカミシャはなにかを思い出したにちがいありません。すこし前のことを思い出したよう です。カミシャは、はいつくばっています。腹ばいになって進み始めました。でも、今度はお皿にではなく、クロードに向かっています。カミシャは頭をクロー ドをおなかの下にすべりこませました。カミシャはおっぱいを飲みます。
ほらほら、太ったおかあさん猫がお皿のミルクをペチャペチャと飲んでいて、仔猫はおかあさん猫のおっぱいを飲みます。きっと同じミルクです。お皿のミルク はおかあさん猫の口に入り、おかあさん猫のおっぱいから出てきて、仔猫の口に入ります。ちがいは、温められるということです。仔猫は冷たいミルクが好きで はないのです。仔猫はミルクを温めるためにおかあさん猫を利用しているのです。
お皿はからっぽになっています。クロードがていねいになめたので、太陽の光が当たるとお皿はきらきらと光ります。
クロードは頭をおなかのほうに向けました。カミシャがおっぱいを吸っているのが見えます。「あらあら、そこで何をしているの、カミシャ」とクロードは言っ ているようです。すると、クロードは前足を伸ばしました。まあ、クロードって、やさしいのね。クロードは爪を全部ひっこめたんです。でも、夢中でおっぱい を吸っているカミシャの頭をポカンとたたきました。するとカミシャは自分が大きくなっているということを思い出したようです。ほかの仔猫はカミシャと同じ くらいに大きくなってもおっぱいを吸うのでしょうか?
0 件のコメント:
コメントを投稿