2012年11月13日火曜日

手作りのオノト型万年筆の思い出


 随分(ずいぶん)以前に、手作りのオノト型万年筆を買ったことがある。
 オノトOnotoとは、英国の万年筆メーカーであったトーマス=デ=ラ=ルーThomas De La Rue & Companyの商標である(現在の社名はDe La Rue Company Limitedで、万年筆は製造していない)。Onotoという商標は、世界のほぼどこでも同じ発音になるようにと考案したものだとされる。
 その昔、明治通りと早稲田通りの交差する一角に、ちんまりとした手作り万年筆屋があった。店主は老人で、店内でエボナイトの軸を削(けず)りだしたり、漆(うるし)を塗(ぬ)ったりして、万年筆を拵(こしら)えていた。勿論(もちろん)、大手の万年筆製造会社の品揃(しなぞろ)えもある。
 万年筆に強い興味を抱くようになると、曾(かつ)て人気を博(はく)したオノト型の万年筆も手に入れたいと思うようになるものであろう。
 件(くだん)の万年筆屋に足を運んだ。
 店主の手作りのオノト型万年筆が1万円だった。試し書きの文字を見てから、ペン先も調整してもらえる。
 万が一、インク漏れなどが生じた場合の無料保証期間はどのくらいなのかと、けちくさいことを訊(き)いてみた。

「私が死ぬまでが、無料保証期間です。不具合があれば、いつでも無料で直します」

 これぞ、まさに職人気質(しょくにんかたぎ)というものだと感心しながら、即座(そくざ)に購入した。

 店主は、2か月後に急死した。

オノト型万年筆というと、この写真のような意匠(いしょう)のものを指す。そのときに買った万年筆は、以前、生徒にやって、手許(てもと)にないので、「笑暮屋(えぼや)」のウェブサイトから写真を借りた。「笑暮屋」では万年筆のカスタムオーダーを請け負っている。リンクも貼っておこう。笑暮屋

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和歌山県, Japan
早稲田大学第一文学部哲学科哲学専修卒業、「優」が8割以上で、全体の3分の2以上がA+という驚異的な成績でした。大叔父は競争率180倍の陸軍飛行学校第1期生で、主席合格・主席卒業にして、陸軍大臣賞を受賞している。いわゆる銀時計組であり、「キ61(三式戦闘機飛燕)の神様」と呼ばれた男である。苗字と家紋は紀州の殿様から授かったものである。

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