2014年3月15日土曜日

『もののけ姫』のアシタカって、よく考えると、二股(ふたまた)をかけていた。

タタリ神による呪(のろ)いを断つため、アシタカは旅に出る。

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カヤ:兄さま。

アシタカ:カヤ、見送りは禁じられているのに。

カヤ:おしおきは受けます。どうか、これを私の代わりにお供(とも)させてください。

アシタカ:大切な玉(ぎょく=黒曜石(こくようせき))の小刀(こがたな)じゃないか。

カヤ:お守りするよう息を吹き込めました。いつも、いつも、カヤは兄さまを思っています。きっと……きっと……。

アシタカ:私もだ。いつもカヤを思おう。
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「兄さま」と呼んでいるが、アシタカはカヤの実兄(じっけい)、実際の兄というわけではない。村全体をひとつの家族のように見なしている。

これは、戦前の八紘一宇(はっこういちう)という思想、簡単にいうと「人類は皆、兄弟姉妹」という考えに通じるものではないのか? 

宮崎駿(みやざきはやお)は、高等学校生のときに学生運動をしており、そのせいで勉強ができなくて、学習院大学くらいにしか合格しなかったという。当時の学習院大学は、今よりも偏差値で10から15は低かった。

いずれにしろ、宮崎駿は左翼思想の持ち主らしいのだが、こういうところで、国粋主義というか、民族主義というか、あるいは軍国主義というか、そういう思想が見えるのは不思議だ。

それはともかく、アシタカはお守りとしてカヤにもらった玉(ぎょく)の小刀を、山犬を介(かい)して、サンに与える。

玉の小刀を女性が男性に与えるのは、エミシ(蝦夷)の世界では、永遠に変わらぬ愛を示している。女性からのプロポーズのようなものである。

永遠の愛を示すものを女からもらっておいて、それを別の女にあげているということになる。

挙句(あげく)の果(は)てには、サンを抱きしめたり、「そなたは美しい」と言ったりしている。

最後には「サンは森で、私はタタラ場で暮らそう。ともに生きよう。逢(あ)いにいくよ、ヤックルに乗って」と、なんらかの事情があるのかもしれないが、カヤのいる村には帰ろうとしない。

よく考えると、アシタカは相当にひどい男である。でも、かっこいいから、まあ、いいか。

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和歌山県, Japan
早稲田大学第一文学部哲学科哲学専修卒業、「優」が8割以上で、全体の3分の2以上がA+という驚異的な成績でした。大叔父は競争率180倍の陸軍飛行学校第1期生で、主席合格・主席卒業にして、陸軍大臣賞を受賞している。いわゆる銀時計組であり、「キ61(三式戦闘機飛燕)の神様」と呼ばれた男である。苗字と家紋は紀州の殿様から授かったものである。

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