2013年8月30日金曜日

『米軍が恐れた「卑怯(ひきょう)な日本兵」――帝国陸軍戦法マニュアルのすべて』

マッカサー元帥(げんすい)General MacArthurも、ニミッツ提督Admiral Nimitzも、大日本帝国陸軍を「史上最強の陸軍」と評価した。

玉砕(ぎょくさい)するまで戦ったとか、平均身長が160センチメートルくらいだったから敏捷性(びんしょうせい)にすぐれていたとか、硫黄島(いおうとう)の戦いでは、22,000の帝国陸軍に対して、アメリカ合衆国軍は10万もの兵力を投入し、帝国陸軍の損害が21,000に対して、アメリカ合衆国軍の損害が28,000だったとか、そうしたことから、「史上最強の陸軍」と評価したのだろうと、以前は考えていた。

『米軍が恐れた「卑怯な日本兵」――帝国陸軍戦法マニュアルのすべて』を途中まで読んで、考えを改めた。

「卑怯な日本兵」とあるが、冷静な戦法の分析である。売り上げが増すようにと、煽動的(せんどうてき)な題名にしたのであろう。

「卑怯」な戦法をいくつか挙(あ)げてみよう。

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褌(ふんどし)姿で、両手を挙げて、降伏するふりをするが、手首のところに手榴弾(しゅりゅうだん)を吊るし、米兵からは見えない状態で近づき、銃を持った米兵が数人、近づいてくると、手榴弾を炸裂(さくれつ)させる。自分の生命(いのち)と引き換えに、数人の米兵を殺したり、負傷させたりするわけである。

1挺(てい)しかない軽機関銃をある地点で撃ち、数メートル移動して、再び、撃ち、それを何度も繰り返し、米兵には軽機関銃が10挺くらいあるように思わせる。

死体のふりをして、いつまでもじっとしている。死体だと思って近づいてきた米兵を撃つ。米兵の数が多いときは、そのまま死体のふりをし続けて、通りすぎてから、背後から銃撃する。

負傷兵のふりをして、米軍の衛生兵に助けを求め、衛生兵が近づくと、ナイフで刺し殺す(ただし、衛生兵を殺すのは戦時国際法違反)。

樹上(じゅじょう)に潜(ひそ)み、米兵がこちらに向かって狙撃(そげき)すると、弾が当たってもいないのに、予(あらかじ)め用意しておいた木製の三八式歩兵銃(さんぱちしきほへいじゅう)に見える偽物(にせもの)を、樹上から落とす。すると米兵は、狙撃に成功したと思い、確認のために樹の下にやってくると、樹上から狙い撃ちする。

囮(おとり)として、犠牲になるのも厭(いと)わず、ひとりが突撃して、米兵が反撃したところで、米兵の配置を把握(はあく)し、そこに攻撃を加える。これはアメリカ陸軍最強の部隊とされる日系アメリカ兵で構成された第442連隊も同じことをしている。

女装して米兵に近づく。フィリピン戦線では、フィリピン人の女性のように着飾(きかざ)る。米兵は女性が近づいてきたと思い、気を緩(ゆる)める。充分に近づいたところで、米兵を撃つ。ただし、これは戦時国際法では、ゲリラの扱いになるので、降伏しようが、負傷して戦闘能力をなくしていようが、殺してよい。なかなか、危険をともなう卑怯な戦法である。

英語で話しかけて、友軍だと思わせて、気を許した米兵を撃つ。

ゴミの中に潜み、只管(ひたすら)、米兵が近づくのを待ち、銃撃する。

落ちているパイナップルなどを持ち上げると、紐(ひも)がつながっていて、手榴弾や爆弾が炸裂(さくれつ)する。
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チャールズ=リンドバーグはスピリット=オブ=セント=ルイス号The Spirit of St. Louisで大西洋単独無着陸飛行を初めて成し遂(と)げた人物であるが、彼には『孤高の鷲 リンドバーグ第二次世界大戦参戦記』という著書がある。これによれば、米軍は日本兵の捕虜をとらず、降伏してきても皆殺しにしていたという。このことを知ったときは、アメリカの白人は有色人種に対する強い差別意識があった(あるいは今もある)のだろうとだけ思った。

『米軍が恐れた「卑怯な日本兵」――帝国陸軍戦法マニュアルのすべて』を途中まで読んで、こんな「卑怯」なことをされ続ければ、次第(しだい)に憎しみが募(つの)り、皆殺しでもしたくなるのは仕方がないかなと思うようになったな。

また、沖縄戦では、2万人以上の若い米兵が発狂したそうである。なんだかメンタルがきわめて弱いなと思っていたが、こんな「卑怯」なことをされ続ければ、そりゃあ、発狂するわな。

とはいえ、以上の戦法は、民間人になりすますのを除いて、戦時国際法には違反していない。もっとも、民間人になりすました場合、降伏したのに射殺されたとしても、国際法上、問題はない。

なお、「卑怯」な帝国陸軍の戦法では、支那事変(しなじへん=日中戦争)での支那兵(しなへい=中国兵)がやった戦法も、部分的に採用しているようである。

また、サイパン戦で帝国陸軍に翻弄(ほんろう)された米軍に従軍していたドン=ジョーンズDon Jonesは、多少、フィクションを混(ま)じえているが、『タッポーチョ「敵ながら天晴(あっぱれ)」大場隊の勇戦512日』Oba, the Last Samurai: Saipan 1944-1945を著(あらわ)している。これは2011年に『太平洋の奇跡―フォックスと呼ばれた男―』Oba, The Last Sumuraiの題名で映画化されている。わずか47人で45,000人の米軍を巧みな戦術で翻弄(ほんろう)した大場榮大尉(おおばさかえたいい)の物語である。フォックスfox(狐(きつね))は、「沙漠の狐」と呼ばれたドイツ軍のロンメル将軍にちなんだものなのだろうか? それとも、狐狩りに由来するのだろうか? あるいは、ただ、狡賢(ずるがしこ)いというだけの意味だろうか?

「卑怯」な戦法をされても、国力が50倍も違うのに、4年近くも戦い続けた帝国陸軍に対して敬意を払っている元=米兵がいるというのは興味深い。



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和歌山県, Japan
早稲田大学第一文学部哲学科哲学専修卒業、「優」が8割以上で、全体の3分の2以上がA+という驚異的な成績でした。大叔父は競争率180倍の陸軍飛行学校第1期生で、主席合格・主席卒業にして、陸軍大臣賞を受賞している。いわゆる銀時計組であり、「キ61(三式戦闘機飛燕)の神様」と呼ばれた男である。苗字と家紋は紀州の殿様から授かったものである。

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