頼泰安(らいたいあん)という人の『少年飛行兵よもやま物語』を読んでみた。
頼泰安は14歳のときに、少年飛行学校の入校試験を受験したところ、合格した。
それからが、たいへん。
新聞記者から取材を受け、翌日には「闘魂に燃える愛国少年、みごと少飛校入試に合格」と大見出しで報道され、市長代理や町長が祝いに駆けつけ、「きみの決断は、日本の少年の誇りであるばかりでなく、本島人[=台湾人]の模範である」と激励(げきれい)をうけ、役所で働いていたが、それまで「おい、給仕!」と呼んでいた上司が「頼くん」と呼び方を変え、女子職員は「あら、頼さんだわ!」と、改まって頭をさげるようになった。軍属として務めていた兄の上司が後に内閣総理大臣となる中曾根康弘海軍主計大尉だった縁から、中曾根康弘から自筆署名した赤襷(あかだすき)を贈られる。土地の名士たちが盛大な歓送会を催してくれ、「盡忠報國(じんちゅうほうこく=忠に尽くし、国に報いる」と大書(たいしょ)した日章旗や餞別(せんべつ)がつぎつぎと届けられる。本土に向かうために台南駅のホームに入ると、駅長がわざわざ激励にやってくる。
そういう時代だったんだろうなあ。
滋賀県大津にある少年飛行兵学校に11月に入校すると、台湾の人には、寒すぎた。床用に2枚、掛け布団として3枚、計5枚が支給されたが、それでも寒かった。それで、台湾出身者には計7枚の毛布が支給されることとなった。
また、日本の軍隊の訓練は厳(きび)しいとは聞いていたが、本当に無茶苦茶厳しくて、びっくり仰天(ぎょうてん)しているところは、ちょっとおもしろかった。
少年飛行兵学校の入校試験がどの程度に難しいのかは知らないが、当時は、受験の難しい順に「一に海兵(かいへい)[=海軍兵学校]、二に陸士(りくし)[=陸軍士官学校]、三、四がなくて、五に東京帝大[=東京帝国大学]」と言われていた。
少年飛行兵学校といえども、台湾のみならず、本土でも合格すると新聞に載ったくらいだから、相当に難しかったのだろう。
なお、この頼泰安は、3番の成績で卒業しており、1番から3番までは「主席卒業(しゅせきそつぎょう)」を名乗れた。すこぶる優秀な人なんだな。
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自己紹介
- 掃除機庵主人
- 和歌山県, Japan
- 早稲田大学第一文学部哲学科哲学専修卒業、「優」が8割以上で、全体の3分の2以上がA+という驚異的な成績でした。大叔父は競争率180倍の陸軍飛行学校第1期生で、主席合格・主席卒業にして、陸軍大臣賞を受賞している。いわゆる銀時計組であり、「キ61(三式戦闘機飛燕)の神様」と呼ばれた男である。苗字と家紋は紀州の殿様から授かったものである。
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