2013年3月11日月曜日

ブータン国王が日本の国会で行なった演説での文体の特徴

 東日本大震災後に、ブータン国王夫婦が来日し、2011年11月17日にシグミ=ケサル=ナムゲル=ワンチュク陛下が国会で演説を行なった。

 ちょっと、ブータン国王の演説における文体の特徴を指摘してみたい。同時通訳による訳ではなく、拙訳(せつやく)をつける。

 全般的にやさしい語を先に、小難(こむずか)しい語を後ろに置く傾向がある。

 a people of great honour, pride and discipline
 大いなる名誉と誇りと規律を備えた国民

 honour(名誉)は、honorの英国式綴(つづ)りである。

 また、a peopleやpeoplesとなっているときは、「国民」などの意味であって、「人々」の意味ではない。

 honourとpride(誇り)は知っていても、discipline(規律)という語を知らない高校生は少なくはない。

 a people  ... of brotherhood and fraternity and unfailing strength and fortitude
 兄弟愛と兄弟関係、ならびに衰えることのない強さと不屈さを備えた国民

 brotherhoodは中学3年生の英語の教科書に登場する。マーティン=ルーサー=キング、ジュニアMartin Luther King, Jr.を題材にしたものに出てくる。

 一方、fraternityは難関大学の大学生でも知らない人が少なくないだろう。

 unfailingは知らなくても、to fail(失敗する)から推測できるし、strengthは形容詞strongの名詞形だと知っている人は多いだろう。

 一方、fortitude(不屈さ)はfortis(強さ)というラテン語に由来する語で、小難しい。

 ちょっとだけ例を上げたが、以上のように、英語が得意でなくても、大体(だいたい)、どういうことを言っているのかがわかるように工夫されている。

 ところが、国会議員の殆(ほとん)どは、同時通訳を聴いていた。

 シグミ=ケサル=ナムゲル=ワンチュク陛下の工夫は、なんの役にも立っていなかった。

 尚(なお)、難関高校や中堅以上の大学の入学試験の問題では、まず、小難しい語や馴染(なじ)みのない語を用い、その3行後や5行後に、わかりやすい語で言い換(か)える。また、名詞や形容詞を列挙(れっきょ)する際、最初に難解(なんかい)な語を置き、後ろにわかりやすい語を置くことで、難解な語がわからなくても文脈(ぶんみゃく)が追えるように工夫している。

 シグミ=ケサル=ナムゲル=ワンチュク陛下の演説とは逆のことをしているのである。

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和歌山県橋本市出身。世界文化遺産である高野山の麓です。
和歌山県立橋本高等学校を経て、早稲田大学第一文学部哲学科哲学専修卒業。
B型Rh+。天秤座。家紋は「丸に九枚笹」。
大叔父(おおおじ)は精鋭集団である帝国陸軍航空審査部所属で、「キ61(きろくいち)の神様」と呼ばれた坂井雅夫少尉。キ61は三式戦闘機「飛燕(ひえん)」のことである。

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