2013年3月12日火曜日

国会でのブータン国王の演説で、unity in thought and actionを「知行合一(ちこうごういつ)」と訳した翻訳官の意図を勘繰(かんぐ)ってみた。

 2011年11月17日にシグミ=ケサル=ナムゲル=ワンチュク陛下が国会で演説を行なった際に、同時通訳では、unity in thought and actionを「知行合一(ちこうごういつ)」と陽明学(ようめいがく)の用語で訳していた。

 まず、該当(がいとう)する段落の英文と、翻訳官による訳文を併記する。

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 The world always identified Japan as a people of great honour, pride and discipline – a people with a proud tradition in history – who approach everything with tenacity, determination and a desire to excel – a people of unity in thought and action; of brotherhood and fraternity and unfailing strength and fortitude.
 世界は常に日本のことを大変な名誉と誇り、そして規律を重んじる国民、歴史に裏打ちされた誇り高き伝統を持つ国民、不屈の精神、断固たる決意、そして秀でることへ願望を持って何事にも取り組む国民。知行合一、兄弟愛や友人との揺るぎない強さと気丈さ併せ持つ国民であると認識してまいりました。 
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 ブータン王国で陽明学は普及(ふきゅう)しているとは思えない。主たる宗教はチベット仏教(ドック派・ニンマ派)である。敢(あ)えていうなら、日本の仏教で最も近いのは真言宗である。

 だから、「知行合一」を訳語として用いる必然性はないといえる。そもそも、unity in thought and actionなら、「考えと行ないの一致」くらいでもよさそうである。がちがちの直訳なら「思想と行動との点での統一性」である。「考えていることをきちんと実践する国民」という訳もありだ。「思想と行為の一致」と訳しても、時間の制約からして、それほど困りはしない。この演説では、同時通訳といっても、事前に原稿を受け取っているだろうから、訳文の前後の文言(もんごん)をいじって、調節できるはずである。


 陽明学とは、王陽明による儒教の解釈のひとつである。「知行合一」とは、知識と行為は一体とならねばならぬという考えであり、知ることは行なうことの始まりであり、行なうことは知ることの完成であるという考えである。この考えを突き詰めると、許せないことをした者は暗殺しなければならないとなる。危険な革命思想になるわけだ。

 日本における陽明学の代表的な人物として、「大塩平八郎の乱」を起こした大塩平八郎が挙(あ)げられる。

 また、松下村塾(しょうかそんじゅく)の吉田松陰(よしだしょういん)もいる。彼は明治維新の指導者を育てた。

 2011年の時点で、どういうことがあったのかを考えると、アメリカ合衆国はTPP(環太平洋戦略的経済連携協定(かんたいへいようせんりゃくてきけいざいれんけいきょうてい)Trans-Pacific Strategic Economic Partnership; Trans-Pacific Partnership)に日本が参加するのを想定していなかったのに、菅直人(かんなおと)が自らの発案で参加すると言い出した。

「第2の開国」と言い出したわけだ。「日米和親条約」や「日米修好通商条約」に次(つ)ぐものと考えたようだ。

 ところが、日本は、江戸時代の鎖国(さこく)のみならず、歴史上、70年から80年くらいの鎖国を繰り返している。平安時代の国風文化にしても、遣唐使を廃止し、鎖国しているから成立した文化である。

 TPPで「第2の開国」と言っているようでは日本の歴史がわかっていない。これまでにも何度も鎖国と開国を繰り返していたからだ。まあ、菅直人は東京工業大学で落第したような、理系でも文系でもないような人物だからな。謂(い)わば、無系人間だ。それに、日本人ではない血筋(ちすじ)も入っているそうだしね。

 さて、以上の経緯(いきさつ)から「知行合一」を考えてみよう。

 朝廷の勅許(ちょっきょ)もなしに、日米修好通商条約を結んだ彦根藩主(ひこねはんしゅ)にして大老(たいろう)である井伊直弼(いいなおすけ)を水戸藩(みとはん)・薩摩藩(さつまはん)の脱藩浪士(だっぱんろうし)たちが襲った。

 桜田門外の変である。

 水戸藩には水戸学があった。陽明学を取り入れた実学的な学問であった。

 井伊直弼のことが、とてもじゃないが許せるものではないとなれば、暗殺せざるをえない。水戸藩に迷惑がかからないように、脱藩(だっぱん)してから、桜田門外の変を起こした。

 こうしたことから、unity in thought and actionを「知行合一」と翻訳官が訳出したのを耳にして、その翻訳官はTPP反対論者(はんたいろんじゃ)で、菅直人に対して、「てめぇ、世が世なら、『桜田門外の変』のように暗殺されても仕方がないぞ」と遠回しに恫喝(どうかつ)しているように感じた。そんな皮肉を他国の国王による演説の訳に入れて、それが当時の与党・民主党に知られたら、その翻訳官は当時の政権によって、更迭(こうてつ)されたり、なんらかの処分を受ける可能性があると思い、ちょっと心配になったくらいである。

 しかし、杞憂(きゆう)であった。

 民主党の議員はみんな、教養がないので、だれもその皮肉に気づかなかった。

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和歌山県橋本市出身。世界文化遺産である高野山の麓です。
和歌山県立橋本高等学校を経て、早稲田大学第一文学部哲学科哲学専修卒業。
B型Rh+。天秤座。家紋は「丸に九枚笹」。
大叔父(おおおじ)は精鋭集団である帝国陸軍航空審査部所属で、「キ61(きろくいち)の神様」と呼ばれた坂井雅夫少尉。キ61は三式戦闘機「飛燕(ひえん)」のことである。

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