2013年1月3日木曜日

映画監督が選ぶベスト映画で小津安二郎の『東京物語』が1位となった理由

 世界最古である英国映画協会British Film Instituteは1933年に設立され、1952年からは、10年毎(ごと)に「映画監督が選ぶベスト映画」ならびに「批評家が選ぶベスト映画」を発表している。

「映画監督が選ぶベスト映画」で小津安二郎の『東京物語』が1位となった。この作品が名作であることには異論はない。しかし、これまでの映画で1位となると、頭をかしげてしまう。

2002年のときには、トップ10に入っていない。黒澤明の『羅生門』『七人の侍』がトップ10入りしていたのに、なぜか、黒澤作品はトップ10からなくなり、『東京物語』が1位となったのだ。

2012年の結果はつぎのとおりであった。

1位 『東京物語』小津安二郎監督
2位 『2001年宇宙の旅』スタンリー=キューブリック監督
3位 『市民ケーン』オーソン=ウェルズ監督
4位 『8 1/2』フェデリコ=フェリーニ監督
5位 『タクシードライバー』マーティン=スコセッシ監督
6位 『地獄の黙示録』フランシス=フォーロ=コッポラ監督
7位 『ゴッドファーザー』フランシス=フォーロ=コッポラ監督
7位 『めまい』アルフレッド=ヒッチコック監督
9位 『鏡』アンドレイ=タルコフスキー監督
10位 『自転車泥棒』ヴィットリオ=デ=シーカ監督

10年前にはトップ10に入っていなかった作品が、いきなり、1位である。

調べてみたところ、「映画監督が選ぶベスト映画」を選んだ映画監督が高齢化したのが、理由だった。10年間の2002年よりも10歳は齢(よわい)を重ねた監督たちである。

多数がすでに老境となっている。

『東京物語』の大雑把(おおざっぱ)な梗概(こうがい)をしたためる。

年老いた夫婦が東京にいる長男・長女の家を訪れるが、日々の生活に忙しく、長男・長女は両親をかまってくれない。戦死した次男の嫁だけが、仕事を休んで、観光案内をする。

これだけではないが、実の息子・娘に邪険(じゃけん)に扱われる場面が多い。

選考委員である映画監督たちが高齢化し、『東京物語』で描かれているようなことを経験することによって、身につまされるようになったのだろう。日本人と較べて、ヨーロッパ人は、親を邪険に扱う傾向が強い。

息子・娘から邪険に扱われるようになった高齢の映画監督が、『東京物語』を高く評価したということらしい。

若手監督が選ぶベスト映画となると、何が1位になるのだろうか? ちょっと気になる。





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和歌山県, Japan
早稲田大学第一文学部哲学科哲学専修卒業、「優」が8割以上で、全体の3分の2以上がA+という驚異的な成績でした。大叔父は競争率180倍の陸軍飛行学校第1期生で、主席合格・主席卒業にして、陸軍大臣賞を受賞している。いわゆる銀時計組であり、「キ61(三式戦闘機飛燕)の神様」と呼ばれた男である。苗字と家紋は紀州の殿様から授かったものである。

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