彼は高等学校2年生の1学期の期末試験で学年でビリから9番だった。野球部だということから、「ある意味、裏のレギュラーだ」と嘯(うそぶ)いた。
彼はスポーツ推薦で、日本大学鶴ヶ丘(つるがおか)高等学校に進学した。
大学もスポーツ推薦で進学しようと思っていた。
ところが、肩を壊(こわ)した。大学へのスポーツ推薦はなくなった。
真面目に勉強しなければ大学に進学できなくなった。
高校2年生の9月から当校に入校した。
日本大学鶴ヶ丘(つるがおか)高等学校の規定(きてい)では、スポーツ推薦で入学した生徒は、怪我(けが)をしても、故障(こしょう)しても、当該(とうがい)の運動部を辞(や)めてはならないという規定(きてい)がある。
だから、しっかり練習をしなければならない。
故障した肩を庇(かば)いながら、早朝からの朝練(あされん)、昼食後の筋力(きんりょく)トレーニング、放課後の練習、これら、すべてに参加しなければならなった。
甲子園に出場するくらいの高等学校は、毎日、どのくらい練習しているのかと訊(き)いてみたところ、うちは東京都内の強豪校(きょうごうこう)ほどではないので、合計で1日あたり7時間くらいですと言った。
強豪校は毎日、9時間以上は練習するという。ナイター設備があれば、夜の9時や10時まで練習できる。
おまけに、ある高等学校の野球部では、「四合飯(よんごうめし)」といって、昼食時の弁当のご飯の量が「四合」だという。
毎日、当校にやってきて、指導を受けながら、当校の効果的なプリントをこなした。日によっては、午後10時にやってきて、午後11時半まで勉強するということもあった。
野球の練習で疲れて、プリントを渡した途端(とたん)に、そのまま眠ったこともあった。
それでも、必ず、毎日、当校にやって来て、勉強をした。
日本大学の付属校からの内部推薦では、高等学校の3年間の内申点の平均と、高校3年生の11月に実施(じっし)される「日本大学統一試験」(通称「日大統一テスト」「日統一」)を受験し、4科目の標準化点[=偏差値]を合計したものの数値で、内部推薦が決まる。
彼は、日本大学統一試験(日大統一テスト)の前に、日本史の対策をした。とにかく、暗記できるものは暗記した。
その年は、日本史の出題パターンが大きく変わった。
その結果、日本大学統一試験(日大統一テスト)の対策専門塾の生徒の大半は、日本史の出題傾向の変更に対応できなかった。
試験の結果、よい成績を、英語・国語のみならず、日本史でも収(おさ)め、クラス担任が、これなら法学部に進学できますねと言った。
3年間の内申点の平均と日本大学統一試験の標準点合計によって、推薦が決まるのだが、その上で、面接がある。これは概(おおむ)ね、形式的なものである(一部例外はあるらしい)。
彼は、3年間の内申点の平均も、日本大学統一試験の標準化点[=偏差値]の合計も、推薦基準のぎりぎりだった。
よほどのことがなければ、合格するのだが、彼は心配した。
3年間の内申点の平均も、日本大学統一試験の標準化点[=偏差値]の合計も、推薦基準のぎりぎりだったことから、たとえば「君はぎりぎりの成績なのだから、大学進学後は心を改めて真面目(まじめ)に勉学に励(はげ)みなさい」などと面接で説教されるなどと彼は予想していた。
ところが、面接ではこんなことを言われた。
「スポーツ推薦で入学して、甲子園に出場するような野球部に所属して、それで、この成績とは、君は本当によく頑張(がんば)ったね」
そう言われて、本人は拍子抜(ひょうしぬ)けしたという。
彼は、日本大学法学部に進学した。父親は大いに喜んだ。
内部推薦とはいえ、スポーツ推薦で高等学校に進学した彼が、法学部に進学することが決まったとき、同じくスポーツ推薦で進学した同級生がこう言った。
「スポーツ推薦でも、努力すれば法学部にも(内部推薦で)進学できるということを証明してくれて、ありがとう」
おい、おい、おまえもちゃんと勉強しろよ。
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- 掃除機庵主人
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- 早稲田大学第一文学部哲学科哲学専修卒業、「優」が8割以上で、全体の3分の2以上がA+という驚異的な成績でした。大叔父は競争率180倍の陸軍飛行学校第1期生で、主席合格・主席卒業にして、陸軍大臣賞を受賞している。いわゆる銀時計組であり、「キ61(三式戦闘機飛燕)の神様」と呼ばれた男である。苗字と家紋は紀州の殿様から授かったものである。
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