当時の早稲田大学第一文学部哲学科哲学専修では、ある必修の演習授業の試験では、第2外国語がフランス語・ロシア語・中国語でも、ドイツ語が出題された。イマヌエル=カントImmanuel Kantの『純粋理性批判』の演習授業では、後期試験の出題範囲が、ドイツ語選択者の場合は、『純粋理性批判』全部で、それ以外の外国語の選択者の場合でも、120ページくらいだった。
当時の私はルートヴィッヒ=ウィトゲンシュタインLudwig Wittgensteinの書いたものの英訳を読んでいたので、英語だけではなく、原文のドイツ語でも読めるようにしようと考えていた。それで、時間の都合がつく授業を調べたら、第二文学部の選択授業のドイツ語が、都合がよかった。第一文学部のドイツ語の授業は朝一番の授業があったりしたので、諦(あきら)めた。
いろいろと調べて、評判のよい若手の講師のドイツ語の授業を受けた。第二文学部では第2外国語は必修ではなく、選択科目だったが、どうやら、それほど熱意のある学生はおらず、教室の後ろから席が埋(う)まるので、最前列の席に坐(すわ)った。最初の授業で、モグリで出席しますと挨拶(あいさつ)をしたら、出席簿の最後に名前を書かれ、毎回、出席を確認された。
学年末になり、最後の授業になった。その授業の講師が、どうしても学年末の試験を受けて欲しいという。早稲田大学第二文学部とそれよりもレベル低い大学でしか、非常勤講師としてドイツ語を教えているにすぎず、自分の教え方が悪いはずはないと思っているのに、試験の結果がよくはない。だから、真面目な学生が試験を受ければ、どのくらいのものなのかを知りたいという。
そういう気持ちってあるんだな。
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