2009年6月6日土曜日

『悪問だらけの大学入試』に関するこのブログの記事がだれかに「検索結果から除外」されていた。

 だれかに、このブログ「掃除機庵主人日乗 l'homme révolté」の記事が「検索結果から除外」にされていた。
 「検索結果から除外」について、まず、説明する。
 最近になって、Googleの検索結果に、題名の右横に四角いボックスが2つ並ぶようになり、ボックスの左側には「↑」(上向き矢印)が、ボックスの右側には「×」(バツ印)が表示されている。
 「↑」のクリックは、「順位を上げる」ものであり、「×」のクリックは、「検索結果から除外」するものである。

 このような工作活動に気がついたのは、「アクセス解析」を調べてみたところ、ある英文(の一部)で検索して、「掃除機庵主人日乗 l'homme révolté」にある「『悪問だらけの大学入試――河合塾から見えること』(その4)」を訪問した者がいるのに、同じ英文(の一部)で検索しても、「『悪問だらけの大学入試――河合塾から見えること』(その4)」にたどりつけないようにされていた。調べてみたところ、(その1)(その2)も検索結果に出てこないように工作されていた。(その3)だけは読まれてもかまわないらしい。

 これらの記事を読まれると、非常に困る人あるいは団体がいるようなので、ここにリンクを貼り、おまけに、再録もしておく。さらには、べつのブログやウェブサイトにも記載する予定だ。





 ということで、以下は再録。リンクを削ったり、多少編集してある。

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『悪問だらけの大学入試――河合塾から見えること』(その1)(12.22.2008)


 2000年に河合塾の丹羽健夫が集英社新書から『悪問だらけの大学入試――河合塾から見えること』という新書を出した。
 当時、新聞や週刊誌の書評欄では、日本本土への初空襲の爆撃機の名前や空襲を指揮した中佐の名前などは憶えたくはないなどと、ある大学の入試問題がこてんぱんに叩かれた。その問題はつぎのとおり。

日本本土への初空襲は、1942年4月18日、航空母艦ホーネットから発進した( 1 )中佐指揮の( 2 )爆撃機16機によるものであったが、これはアメリカ国民の戦意高揚が大きな目的であった。この空襲は、開戦初期の勝利感に酔っていた日本軍部に大きな衝撃を与えた。

 これだけを目にすると、「これはひどい」「悪問だ」と感じるかもしれないが、しかし、くだんの大学入試では選択肢が与えられており、そこから推測することは可能である。
 まず、初空襲を指揮した中佐の名前であるが、選択肢にあるなかで、アメリカ人の名前らしきものはつぎの3つしかない。

ハルゼー ドゥリットル マッカーサー

 マッカーサーは、のちにGHQ総司令官となっているので、そのような人物が、中佐という高くはない階級とは考えられない。ハルゼーとドゥリットルが残る。受験というものは、どんな問題でも確実に正解しなければならないわけではなく、ここで2分の1の確率でどちらかを選べばよいだろう。戦史マニアならば、ハルゼーが第3艦隊司令長官だということを知っているだろうが、そこまで知っている受験生は、その分、英語や国語ができないので、気にしなくてよい。
 受験では、すべてを知っていなければならないわけではない。ここで、簡単に説明しておく。60%正解できれば合格できるとする。自分の知識で確実に正解できるのが30%だとすれば、残りの70%の問題を選択肢2つにまで絞り込めれば、確率上は、70%の半分である35%が正解となり、合計で65%が正解しているので、合格となる。したがって、完璧に正解がわかる問題が60%以上である必要はない。

 つぎに、初空襲時の爆撃機の名前であるが、これも選択肢からつぎの3つに絞り込める。

B17 B25 B29

 B29は太平洋戦争の末期に投入された爆撃機である。Bはbomber(爆撃機)の頭文字だ。17、25、29などの数字は、正確ではないが、だいたい、開発の順番を示している。ということは、大戦末期に投入されたのがB29だということがわかっていれば、1942年の爆撃に使用されたのはB25あたりではないかと見当がつけられる。たかだか2年くらいのうちに、爆撃機を何機も開発できるはずがないと考えるのが妥当である。実際、正解はB25である。
 もちろん、これを悪問だとする人のなかには、B17だって第2次世界大戦初期にヨーロッパ戦線で活躍していたと主張するかもしれないが、これは知識の有無を試しているのではなく、常識の範囲内で、妥当な推測ができるかどうか、つまり、地頭(じあたま)がよいかどうかを試している問題であって、むしろ、知識偏重を否定している問題であるといえなくもないのである。むろん、中途半端な戦史マニアは、B25よりもB17のほうが活躍していたからと、誤答してしまうかもしれないが。
 当校には、大手予備校に通いながら、週1日だけ受講している受験生もおり、大手予備校での授業内容を耳にする。実際、対処方法がわからない問題に関して、悪問と騒ぐよりも推測などの対処方法を指導すべきであろう。

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『悪問だらけの大学入試――河合塾から見えること』(その2)(12.23.2008)

 つぎのような問題も推測すれば正解できるようになっている。

栄西より日本茶が中国からもたらされたのは西暦何年か。
①1250年 ②1191年 ③1320年 ④1110年

 栄西について、受験生ならば、最低でもつぎの知識は備えているだろう。すなわち、栄西は、鎌倉仏教と呼ばれる宗派のうちのひとつである「臨済宗」の創始者である。
 栄西が、何年に、宋にわたり、戻ってきたのかを知っている必要はない。
 ポイントは、彼の宗旨・宗派が、「鎌倉新仏教」に分類されている点である。時代区分がその名称につくものは、たいてい、その時代の最初のころに登場したものである。
 たとえば、「昭和維新」とは、昭和初期に起こった国家改革の標語である。
 平安仏教といえば、真言宗と天台宗である。場合によっては、融通念仏宗も含むことがあるが、一般的ではない。平安時代は794年に始まり、1185年(ないしは1192年)まで続いている。真言宗も天台宗も9世紀初頭に、日本に持ち込まれている。真言宗も天台宗も、800年代に登場しているわけだ。
 もしも「昭和の歌姫」を選ぶとするならば、昭和20年から活躍した美空ひばりがふさわしいだろう。ただし、山口百恵という反論は認める。しかし、中森明菜は「昭和の歌姫」の称号には無理がある。登場が遅すぎるからだ。
 以上のように、時代を表すことばが伴うものは、その時代区分の初期に登場している。
 栄西の臨済宗が鎌倉仏教に数えられるという最低限の知識から、正解が得られる。選択肢の年号を並べなおそう。

1110年 1191年 1250年 1320年 

 鎌倉時代は、1185年(かつては1192年)から始まり、1333年に終わる。
 すでに述べたことからわかるように、臨済宗が鎌倉仏教に分類されるのであれば、栄西が活躍したのは、鎌倉時代の初期であるはずである。
 となると、1110年は、鎌倉幕府の始まりよりも75年(ないしは82年)も前のことなので正解ではない。
 1320年は鎌倉幕府崩壊の13年前なので、これも正解ではない。
 また、ちゃんと勉強している日本史選択者であれば、臨済宗が鎌倉幕府の庇護を受けたという事実は知っているはずであるが、かりに、栄西が宋から戻るのが1250年であれば、鎌倉幕府の庇護を受けたというのは考えづらくないだろうか? ある体制が整ってから50年以上も経過してから、幕府公認の仏教となるとは考えにくい。このあたりにまで考えることができれば、1250年も正解であるはずがないと判断できる。
 以上の推測を成り立たせるために、出題者は意図的に「1110年 1191年 1250年 1320年」という選択肢を用意したのであろう。
 つまらない瑣末(さまつ)な知識を憶えておけというのであれば、たとえば「1188年 1191年 1197年 1201年」という選択肢を用意していたはずである。
 出題者は、日本史で「稼(かせ)ぎ逃げ」をされないようにしつつ、地頭(じあたま)のよい受験生ならば、得点できるようにと選択肢を工夫しているのである。

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『悪問だらけの大学入試――河合塾から見えること』(その3)(12.24.2008)

 もちろん、河合塾が指摘するとおり、悪問と呼べるものが多数存在する。しかし、大学入試の出題者は、意識的に悪問を出題しているようであり、そのことを指摘して、受験指導に役立てるようにするべきであろう。
 そもそも、私立文系の場合、大学側は社会科の選択科目で「稼ぎ逃げ」をする学生は好まないようである。だから、日本史・世界史・地理などで稼(かせ)ぎ逃げができないように難問を出すのだ。関西の大学に見られるのだが、英語・国語・日本史(世界史・地理)の配点を、英語200点・国語150点・日本史(世界史・地理)100点という具合に傾斜配点にして、英語・国語が苦手な受験生が合格しにくくする。
 同じ配点にしているところは、そのかわりに、難問・悪問を多くしている。
 社会科の選択科目で得点を稼(かせ)いだ学生が、入学後の大学での成績ではあまり成績が振(ふ)るわないというデータもある。
 内部でしか明らかにされなかったのであるが、小論文導入以前の早稲田大学第一文学部(現在の早稲田大学文学部。昔の東京専門学校文学科・哲学科)で、過去10年分の入学者の入学試験での得点状況と入学後の成績との相関関係を調べ上げたことがある。結果はというと、入学試験での英語の成績は入学後の大学での成績に強い相関関係があったが、日本史・世界史などの社会科では、あまり相関関係が見られなかったそうだ。つまり、入試での英語の成績のよかった者は大学での成績もよく、英語の成績の悪かった者は入学後の成績も悪いという傾向にあったわけである。その一方で、日本史や世界史で高得点であった者は、成績がよい傾向にあるわけでもなく、入学後の学業成績にはなんの関係もなかった。
 入学試験での日本史や世界史の成績のよさが、入学後の学業成績をなんら担保(たんぽ)しないのであるなら、入学試験としてあまり意味があるとはいえず、単に浪人生に有利になるだけにすぎないということから、選択科目をなくして、英語・国語・小論文という形式に変更したそうである。(もっとも、これは後に、西洋史学専修・東洋史学専修・日本史学専修の人材不足を招いたことから、再び日本史・世界史を受験科目に加えたようだ。)
 難問・悪問を出題する大学は、どうも、社会科で得点を稼ごうとはせず、英語・国語に力を入れなさいというメッセージを発していると私は考えている。

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『悪問だらけの大学入試――河合塾から見えること』(その4)(01.18.2009)

 この本ではまた、つぎの問題を掲げて、「複数解答が出てしまう」と述べている。

The phrase information revolution is often used in the media to describe the (1)radical change in recent society which (A) the widespread diffusion and use of computers in everyday life. (以下略)

設問1. 下線部(1)から(4)の意味として最も適切なものを一つずつ選べ。

(1) a. acute b. fundamental c. progressive d. recent

 これに対して、つぎのようにコメントしている。

設問1 (1) のradicalの意味については a. acuteとb. fundamentalの複数解答が出てしまう。

 acuteも正解だとする感覚が信じられない。
 そもそも、acuteは、「急性アルコール中毒」の「急性」にあたる語であり、小さな辞書でも、acute pain(げきつう)が掲載されている。acuteを正解の候補とする時点で、入試問題などを除いた英文をふだんから読んでいないと告白しているようなものである。
 しかし、一般の高校生の場合、英文での読書量が少なく、用法・用例からは正解にたどりつけない場合もあるだろう。
 その場合は、「語源」から考える。
 radicalの語源は「root」を意味するラテン語のradixに由来する後期ラテン語のradicalis(を持っている)である。
 acuteは、「鋭くする」の意味のacuereの過去分詞acutusからきている。「」とはなんの関係もない。基本となる訳語は、「鋭い」や「(病気が)急性の」である。
 一方、fundamentalはというと、「基礎base」「底bottom」の意味のラテン語のfundusに由来している。そもそも「本からの」の訳語があり、さらには、「〈和音が〉基本形の」の意味もあり、これは、音(root)を最低音を最低音とすることについていうものである。
 どうして「複数解答が出てしまう」と考えるのか理解に苦しむ。
 こうした問いを設けているのは、辞書を引くときにはふだんから語源などにも目を通しておけという出題者からのメッセージなのであって、単語集を使って、日本語の意味だけを憶えているようでは的確に正解がわかるようにはならないということを告げているのだ。
 西洋由来の学問を勉強すると術語[=専門用語]の解説に際して、頻繁に語源に言及されるということがわかっていれば、なんの苦もなく正解がわかる。どうやら、著者はアカデミックな知識がかけらもないようである。
 自分が簡潔に説明できないからといって、悪問と決めつけるのは困ったことだ。

 河合塾は意図的にこうしたことを煽(あお)っているのであろうことはわかる。ビジネスの基本はボリュームゾーンを狙うことである。対象となる顧客を最大にすることだ。偏差値63以上の受験生を対象にすると、上位の10%しか顧客になりえないが、偏差値37から63までの受験生を対象にすると、80%がカバーできる。つまり、この本は、偏差値63以下、あるいは偏差値58以下の受験生が抱きそうな不満を代弁しているにすぎないのかもしれないのだ。
 また、大学入試問題の作成請負を行なうに当たっての宣伝もあったのだろう。実際、委託している大学は少なくないそうだ。
 金儲けの臭いのするものは、やはり信用すべきではない。

 著者は「やはり大学は正解を発表すべきであろう」とも述べているが、そうなると、どうしてそれが正解なのかを理解できない、あるいは公表された正解を、自らの思い込みから間違っていると判断した予備校から問い合わせが殺到するであろう。そうなると、なぜ、それが正解なのかを説明しなければならない。それを説明すると、出題の意図が知られてしまう。
 大学受験で試している能力は、ものごとを理解して憶えていることだけではない。過去問を解く作業を通して、どんな出題傾向なのか、どういう選択肢が正解となることが多いのか、そういった「規則を見出す」能力も試している。そう考えないと、出題者がいくら変わっても、あれほど出題傾向を維持しているのを、偶然と考えるには無理がある。正解を公表して、正解の根拠を示すと、手の内がばれてしまう。「規則を見出す」能力の持ち主が有利にならなくなる。そうなると、暗記に長けた者ばかりが合格することになる。これは大学にとって避けたい事態であろう。

 著者はまた、悪問を出題する大学の代表例として早稲田大学を槍玉(やりだま)に挙げている。すでに述べたことだが、「捨て問」はあっても、それほど悪問はない。
 資料を探す時間がないので、具体例は挙げないが、以前、つぎのような出題が早稲田大学法学部であった。
 下線を施した単語の意味を訊ねる設問だが、駿台予備学校のハイレベル模試でコンスタントに偏差値75以上がとれる受験生でもさっぱりわからないはずの単語だった。しかし、その年度のその設問だけを見て「悪問だ」と騒いではいけない。
 その単語は、3年前の入学試験の長文の中に登場していた。その年度では設問に関わりがなく、知らなくても問題は解けるようになっていた。
 3年後に、その単語が出題されたのであるが、早稲田らしい意地の悪い出し方をしていた。3年前の長文で使っていたのとは違う意味でその単語を使っていたのである。正確に述べると、別の意味というよりは、同じ綴(つづ)りだけれども、辞書では別の見出し語となっているほうの意味で出題していた。
 これはどういうことか?
 3年前の過去問の長文を自力で辞書を引きながら、考えつつ訳した受験生だけが正解できる設問ということである。他大学が第1志望の受験生は、第1志望でない大学・学部の問題を丁寧に自力で訳してみたりはしないだろう。また、単なる滑り止めの場合だと、3年分も解かないことが多い。
 つまり、第1志望にしており、丹念(たんねん)に辞書を使って自力で訳したことのある者だけが、得点できる設問だったのである。
 以上のように、時系列を踏まえれば、悪問でもなんでもない問題だったのである。悪問と騒ぐ前に、対処方法を伝えるべきであろう。
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買って読むほどの本ではない。

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和歌山県橋本市出身。世界文化遺産である高野山の麓です。
和歌山県立橋本高等学校を経て、早稲田大学第一文学部哲学科哲学専修卒業。
B型Rh+。天秤座。家紋は「丸に九枚笹」。
大叔父(おおおじ)は精鋭集団である帝国陸軍航空審査部所属で、「キ61(きろくいち)の神様」と呼ばれた坂井雅夫少尉。キ61は三式戦闘機「飛燕(ひえん)」のことである。

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