2009年8月21日金曜日

柿渋石鹸:なんか、いんちきくさいぞ。

 べつに見たくもないのに、やたらと目に入る広告がある。柿渋石鹸(かきしぶせっけん)だ。

今、40代の男性中心に、通販のみで40万個も売れている。

 まず、「40万個も売れている」と謳(うた)っているが、いつまで経(た)っても、「40万個」のままだ。相当、以前に見たときから、「40万個」のままというのはおかしい。そろそろ、「40代の男性中心に、通販のみで50万個突破!」などになってもよさそうなものだが、その気配(けはい)はない。
 数字を出せば説得力が増すと一元的に考えるのは誤りである。
 たとえば、ブラジリアン柔術のヒクソン=グレイシーRickson Gracieは400戦無敗と称(しょう)していたが、いつまで経っても、400戦無敗から数字が増えずにいた。そのことを指摘されてから「400戦以上無敗」と称するようになった。その後、450戦以上無敗にも、500戦以上無敗にもなっていない。
 ドクター中松こと中松義郎の自称による発明件数もずいぶんと長い間、更新されることなく、同じ数字のままであった。ある人が事務所に電話をかけ、発明件数が増えていないことを指摘し、おかしいのではないかと告げたところ、後日、発明件数が増えたそうだ。
 数字を出すことで説得力を増そうとするのはいいけれども、嘘(うそ)の数字だと、見破られてしまう。

「嘘の三八(さんぱち)」ということばがある。人は嘘を吐(つ)くときに、「3」と「8」を多く使うということだ。実際には「3」と「8」のほかに、「5」も使う。たとえば、数を実際にはかぞえることなく、適当に数字をいう場合、「30人くらい」や「50人くらい」という傾向が強いが、「40人くらい」はない。
 ちなみに、作家の村上春樹は初期の『風の歌を聴け』『1973年のピンボール』の描写で、むやみやたらと数字を出している。そのことのついて、『ウォーク・ドント・ラン』という村上龍との対談集で、リアリティを出すために、数字を多用したとの発言を村上春樹はしているが、「3」「5」「8」が多くて、むしろ、リアリティのない数字の羅列(られつ)の終わっていることに気づいていないらしい。
「40万個」という数字は「嘘の三八」を逆手にとって説得力のある数字にしたかったのかもしれない。しかし、数字が変わらないままだと、胡散(うさん)くさくなってしまう。

 柿渋石鹸が、そんなに売れているのであれば、広告を出す必要はない。
 通信販売でそれほどまでに売れている商品の広告を出し、註文(ちゅうもん)が激増すれば、生産量を増やさなくてはならないから、工場の生産ラインを改善しなければならず、困ったことになる。
 にも拘(かか)わらず、広告を出し続けているのは、怪(あや)しい。
 この点に関しては、たとえば、サントリーが「伊右衛門」を販売したところ、さしたる宣伝はしていなかったが、あまりのヒットぶりに、ペットボトルそのものの生産が追いつかなくなり、生産ラインの建て直しのために、一時的に工場を閉鎖していることが挙げられよう。一時的な販売停止になっていないところを見ると、広告のわりにはさっぱり売れていないらしいと推測できる。

「通販限定」というのもあやしい。
 それほど人気のある商品であるならば、どこかの商社が乗り出して、一般の販路でもっと売ろうとするのが普通だ。実演販売も行なわず、パイロット=ショップも出さず、通信販売限定のままというのは、説得力がないばかりか、あやしさを倍増するだけである。

 柿渋石鹸には1個(110g)で2,100円もするものがある。
 薬用石鹸ミューズでさえ、コンビニエンス=ストアで買っても、1個135円くらいだったと思う。この1個135円というのは、石鹸のなかでも、高額である。
 柿渋石鹸やオリーブオイル石鹸で儲(もう)けようとするのは、卑(いや)しいとしか思えない。
 ちなみに、柿渋そのものは、純国産の無臭柿渋で、20ℓで31,200円で手に入る。1ℓあたり1,560円だ。100gなら156円だ。探せばもっと廉(やす)いものがあるかもしれない。そんなものを混ぜた110gの石鹸に関して、どこから、2,100円という値段が出てくるのか。



村上龍と村上春樹の対談。絶版だからといっても、この程度の対談がこれほどの高額で取り引きされているということに、村上春樹の人気のすごさをうかがわせる。当人たちが復刊に同意していない点からもわかるように、しょうもない本だよ、これ。図書館で借りて読むだけで充分だ。私は、今よりも若いときに、買って読んだけどね。

追記:いつのまにか柿渋石鹸の売り上げが40万個から50万個に増えていた。しかし、増えないままだとまずいと思ったのだろうが、「50万」というのは、適当に数字をでっち上げる際によく用いられるものなので、理屈ではなくとも、直観的に「胡散臭(うさんくさ)い」と感じる数字なので、いつまで経っても40万個のままよりも宣伝効果は下がるに違いない。かといって、すぐに60万個にすると、「生産設備はどうなっているのか?」という疑念を呼び起こすに違いないから、柿渋石鹸ビジネスは袋小路に入ったと考えても差し支えないだろう。なお、うちの近所のLAWSON 100では「柿渋エキス入り石鹸」が105円で売られているそうだ。(2009.11.09)

追記その2:2010年6月の時点で70万個の売り上げになっていた。7か月で20万個、売り上げたことになる。楽天ランキングの「石けん・ボディ洗浄料」部門の第21位が「ミョウバン柿渋石鹸」で累積販売数が68,803個(2010年6月16日)にすぎない。

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和歌山県橋本市出身。世界文化遺産である高野山の麓です。
和歌山県立橋本高等学校を経て、早稲田大学第一文学部哲学科哲学専修卒業。
B型Rh+。天秤座。家紋は「丸に九枚笹」。
大叔父(おおおじ)は精鋭集団である帝国陸軍航空審査部所属で、「キ61(きろくいち)の神様」と呼ばれた坂井雅夫少尉。キ61は三式戦闘機「飛燕(ひえん)」のことである。

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