2009年8月16日日曜日

スープは飲むか、食べるか;けんちん汁は飲むか、食べるか

 スープは、英語では「食べる」to eatものだと思っている人が少なくないようだが、そうとはかぎらない。しかしながら、同時に、「食べる」to eatか、「飲む」to drinkかだけで考えているようでは、自然に話すことは身につかない。

『英語達人塾―極めるための独習法指南』(斎藤兆史(よしふみ)著・中公新書)に、つぎの記述がある。

 日本語と英語との差異ばかりが強調された結果、ある英語表現に関して間違った固定観念が生まれることがある。そのいい例がスープの「飲み方」。日本語ではこのとおり、味噌汁やスープは「飲む」と表現することが多い。だが、英語ではスープは「食べる」(eat)ものだと習った人が多いのではないか。オックスフォード大学出版局の『英語の疑問』(Questions of English, 1994)は、Do you eat soup or drink it?という質問に対し、実に明快に答えている。曰く、どちらも正解。コンソメのような薄いスープなら「飲む」だろうし、野菜スープのようなものなら「食べる」。外国人に「けんちん汁は食べるものか飲むものか?」と真顔で聞かれたら、どう答えたらいいだろうか?
(原文では「味噌汁」の「噌」は、旁(つくり)が「曾」となっている正字体)

 けんちん汁にかぎらず、特定の社会階層では、食べ物はおしなべて「いただく」ものなんだけど。

夕食で、けんちん汁をいただきました。

 外国人に日本語を教えるのであれば、「いただく」で教えるべきであって、「食べる」「飲む」は、論外であろう。下品である。さらには、「いただく」の思想的背景も教えるのがよいだろう。けんちん汁は「食べるものである」あるいは「飲むものである」と結論するようだと、次元の低い問題設定と次元の低い解答でしかないような気がしてならない。

 ついでにsoupについては、to drinkto eatのようなあからさまな表現は下品であり、「食べる」「飲む」のほかにもさまざまな意味のあるto haveを使うものなので、実際の会話では困ることはない。

I had vegetable soup.
野菜スープをいただきました。

For dinner, I had consommé.
夕食に、コンソメ=スープをいただきました。

 著者は英語圏で暮らしたことがないのかと思ったが、インディアナ大学やノッティンガム大学に留学している。もしかすると、研究ばかりしていて、地元の人とあまり話さなかったのかもしれない。

   

 これらの著書が、まっとうなことが書いてある説得力のあるものであることは保証する。著者はスープをいただくようなライフスタイルではないのかもしれないのだけれど。

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和歌山県, Japan
早稲田大学第一文学部哲学科哲学専修卒業、「優」が8割以上で、全体の3分の2以上がA+という驚異的な成績でした。大叔父は競争率180倍の陸軍飛行学校第1期生で、主席合格・主席卒業にして、陸軍大臣賞を受賞している。いわゆる銀時計組であり、「キ61(三式戦闘機飛燕)の神様」と呼ばれた男である。苗字と家紋は紀州の殿様から授かったものである。

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