広告代理店勤務の知り合いから電話があって、私が着ている革ジャンとヘルメットが、これから作成するポスターのイメージに合っているから貸せという。
革ジャンは、造船所で働く人dock workersのために開発されたもので、雨の中でも作業ができるように防水加工が施(ほどこ)されている。革ジャンとしては、きわめてシンプルな部類に入るデザインのものだ。革ジャンの内側には、背中の部分にはハーレー=ダビッドソンHarley-Davidsonのロゴと、初期型のオートバイが刺繡(ししゅう)されている。8万円くらいだったような気がするが、このくらいの商品はファスナーを修理したりすれば、20年以上着られるので、結果的に、ユニクロよりもお得だと思う(ユニクロは買ったことがないけど)。革が分厚(ぶあつ)くて、ちょっと動きづらい。
ヘルメットはアライヘルメットのフラッグシップ=モデルRX-7で、定価5万5千円くらいのもの。色は白で、元来、オリジナル塗装を施すためのものなのだが、そのまま使っていた。そういえば、白いヘルメットしか買ったことがないなあ。
警視庁など、お役所関係の仕事は、広告代理店としては、基本的にあまり儲(もう)からない。それでも、一般の顧客に対する信用度を高めるために、引き受ける。警視庁の仕事を請(う)け負(お)っているのであれば、信用できるだろうと思わせるのだ。
交通安全週間のポスターはというと、こんな感じのものに仕上がっていた。
オートバイ乗りが、病院の手術室の前にある長椅子に腰かけている。片方の腕には包帯が巻かれ、その腕を三角巾(さんかくきん)で吊(つ)っている。肩から革ジャンを羽織(はお)り、横に白いヘルメットが置かれている。額(ひたい)にあたるところにあるARAIの文字は消えていた。白いテープを貼って見えなくしたそうだ。警視庁のポスターに特定の企業の名が出るのはまずいらしい。
秋の交通安全週間になると、あちこちの交番(当時は「派出所」が正式名称)に貼(は)られていた。モデルのお兄さんが身につけると、口惜(くや)しいくらいにものすごくかっこよく見えた。
翌年の秋の交通安全週間では、ポスターのモデルにSMAPの木村拓哉が起用されていた。「木村拓哉も、やっと、おれの革ジャンとヘルメットに追いついたか」と思った。
0 件のコメント:
コメントを投稿