その手口は、うまく考えらたものであった。こういうものだ。
斡旋手数料は総額で、慶應義塾大学は3,500万円で、青山学院大学は2,500万円である。最近は景気がよくないので、この値段だが、以前なら、慶應義塾だと1億円は出さなければなかった(←これで3,500万円は廉(やす)いと思わせる。それにしても、個人的には、青山学院の価値が、とりわけ男子学生にとって、慶應義塾の7分の5もあるとは思えないのだが)。
慶應義塾大学の場合、国会三田会という慶應義塾出身の集まりがある。三田会というのは慶應義塾の同窓会の名称である。三田会の三田は、慶應義塾の本部所在地である東京都港区三田二丁目15番45号に由来する。あまたある三田会のうち、衆議院議員・参議院議員などで構成されるのが国会三田会である。
国会議員を通じて大学側に入学試験での得点の上乗せを依頼する。もっとも、箸(はし)にも棒にもかからない成績で、得点の上乗せをしても合格最低点に届かない場合は、不合格になってしまうが、その場合は、3,500万円を全額、返却する。合格の場合は、こちらの手数料を引いた分を政治献金という形で国会三田会に送金する。
この斡旋詐欺のうまいところは、不合格の場合には全額返却というところである。これなら、文句は出ない。
また、実際には、国会議員に斡旋していない。合格しているのは、実力で合格した受験生だけである。絶対確実に合格すると確証がない場合、経済的に余裕のある保護者の中には、わずか3,500万円で10点なり、15点なりが上乗せしてもらえるのならば廉(やす)いと考える。
一般の大卒者の平均生涯賃金が2憶5千万円のところ、早慶以上になると平均が、3億5千万円だ(これについて、文学部出身者、とりわけ哲学科出身者が一所懸命に平均生涯賃金を下げる努力をしているのだが、力(ちから)及ばずである)。単純に考えて、1億円の差だから、3,500万円を投資しても、6,500万円分、お得になるから、犯罪という点を除けば、合格斡旋に3,500万円を投資するのは、経済学的に合理的な行為である。
合格した場合にのみ、斡旋料を着服し、不合格の場合には返却しているのだから、この詐欺はばれるはずがなかった。ところが、ばれてしまった。
合格発表の前に、すでに受け取っている斡旋料を遣(つか)い込んでいたのである。当然、斡旋料の全額返却ができず、被害者に訴(うった)えられ、発覚した。
合格発表まで、遣(つか)い込まずにいたら、けっしてばれることはなかったんだろうなあ。
この事件が発覚した直後、学習院の女子中等科の説明会だったと記憶しているのだが、学習院では、中学受験・高校受験・大学受験では、コネや不正はまったくないので、甘いことばに騙(だま)されないようにと、何度も言っていたそうだ。
学習院幼稚園と学習院初等科については、コネなどが使えないとは言っていなかった。うーん、ちょっと気になるところだ。
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