コンビニエンス=ストアでも、店舗によっては「いらっしゃいませ、こんにちは」と店員がつぎからつぎへと言う。
あまり意味のある発話行為とは思えないでいた。
ところが、これには意味があった。
万引き防止だ。
「いらしゃいませ」と声をかけることで、「客としての自分は店員に注目されている」と思い知らせる作戦である。「注目されている」と思わせると、その客は万引きしなくなる。
だから、この手の店で「いらっしゃいませ」と言っているのは、本当は「いらっしゃいませ」と思っているわけではなく、万引きしにくくするために「いらっしゃいませ」と言っているにすぎない。つまり、「おまえの存在にこちらは気づいているから、万引きしたら、気がつくぞ。万引きするなよ、おい、こら」というメッセージを伝えているにすぎない。
なんか、ムカつかないかな?
店によっては、というか、店員によっては、この人は万引きするタイプではないと判断して、私に対しては「いらっしゃいませ」とは言わなくなる店がある。そういう店は、「袋は要りません」と言った場合でも、買った商品にシールを貼ったりはしない。そういうところには好感を抱いている。
その一方で、いつまで経っても、「いらっしゃいませ」を連発する店は、行かないようにしている。自分の判断で行動できない店員しかいないか、あるいは、マニュアルを一方的に強制するオーナー・店長の店であるかのいずれかであるからだ。
硬直したシステムほど、たちの悪いものはない。
「いらっしゃいませ」を連発する店舗は、あるいは、万引きをするのが当然のような客層が中心の店舗(てんぽ)なのかもしれない。万引き常習者が集まる店舗というのは、どういうものなのだろうか? それはわからない。
が、いずれにしろ、「いらっしゃいませ」を連発する店は、あまり気分のよいものではない。おれのことは、ほっといてくれよと思う。
しかしながら、世の中には、いろんなタイプの人がいるもので、「いらっしゃいませ」と声をかけられることで、普段はだれからもその存在を顧(かえり)みられない人にとっては、唯一といってよいくらいに、自分のことを注目してもらえる機会であって、そういう人にとっては、うれしいことなのかもしれない。「声かけがしっかりしていて、好感のもてる店でした」とブログなんかで書いている人もいる。でも、そういう人は、よほど孤独なのだろう。知らない人に声をかけられてうれしいという人の気持ちが、私にはわからない。
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