Wittgensteinという綴りだから、標準ドイツ語の発音をカタカナ表記にすれば、「ヴィトゲンシュタイン」となるはずである。しかし、日本の哲学界では、「ウィトゲンシュタイン」と表記するのが一般的である。
ちなみに、ウェブで"ウィトゲンシュタイン"で検索すると、約131,000件だったが、"ヴィトゲンシュタイン"だと約52,000件だった。
「ウィトゲンシュタイン」と表記する理由は、こうだ。
標準ドイツ語では"w"の発音は英語の"v"と同じなのだが、ウィーン方言のドイツ語では「柔らかい」音で発音する。そもそも「ウィーン」という地名自体、"Wien"だから、標準ドイツ語だと「ヴィーン」となるが、ウィーン方言の発音にあわせて「ウィーン」と日本語では表記する。
日本語は、西洋語に関しては、きわめて原音重視だ。いや、むしろ、中国語以外では原音重視だといったほうがいいかな。
人名に関して、出身地の方言を採用するのは、どういうものかなと思う。
日本の地名・人名に関しては、地元の発音、とりわけ、抑揚(よくよう、イントネーション)を重視することはあまりないようである。「中田」さんの場合、地方によって、「なかだ」であったり、「なかた」であったりする。このあたりは区別するようだ。
たとえば、長崎県「佐世保」の場合、地元での発音は「させほ」に近い発音であるのに、「させぼ」が一般的な読みとなっている。
また、作家の太宰治(だざいおさむ)の本名は津島修治(つしましゅうじ)であるが、津軽弁では「つすますーず」と発音するそうだが、しかし、太宰治について述べる際に「太宰治の本名はつすますーずです」とはだれも言わない(ようだ)。
私自身、自分の名前を述べる場合、基本的には共通語(標準語)のイントネーションで発音する。出身地の方言のイントネーションで発音するのは、地元にいるときだけだ。
ウィーン方言ではそう発音するといわれても、「ウィトゲンシュタイン」と表記することには、すこぶる抵抗を感じている。
しかしながら、この考え方で英語を考えると、英語に由来する語のカタカナ表記はすべからくイギリス発音でないといけないことになってしまう。英語は、本来、イングランドの言語なのだからね。
そうすると、schedule(スケジュール)は、「シェジュール」となってしまう。parents(ペアレンツ)は「パレンツ」になってしまう。
このあたりについては、イングランドの植民地だったアメリカ合衆国が、今では、唯一の超大国となり、インターネットを、ある意味では、支配しているという現状を鑑(かんが)みなければならないのだろう。
一貫性のない主張で申し訳ない。
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