2009年4月1日水曜日

漢文で、まったく知らないときの最後の抵抗策(いんちきくさいけど、それなりに有効)

 HAL496では、生徒によっては、入学試験の過去問の演習しかしないという場合もある。
 漢文をまったく勉強したことがない生徒を対象に、問題を解いてもらって、解答・解説を行なっていたときのことだ。
 全然、勉強したことがないので、そのまま解かせるわけにはいかないので、こちらが音読してみせた。音読そのものが、理解の一助となる。内容がわかっていないと、どこで区切るのかさえわからないものである。だから、正しい音読を耳にするだけで、相当にわかる。
 音読を耳にするだけで読解力を要求する問題は、いくらか得点力が向上するが、それでも、知識問題は、知らなければまったく歯が立たない。

二重傍線部「已」と同じ読み方をする文字はどれか。正しいものを次のうちから選べ。

1 焉   2 乎   3 耳   4 之

 さて、「已」の読みは、出題文にふりがなが施されているので、「のみ」だとわかるようになっている。ところが、生徒は、ほかにどのような文字が「のみ」の読みになるのかを知らないという。それなら、100%使える方法ではないが、それで当たれば儲(もう)けものという手を説明した。
 もちろん、いつでもこれで正解できるというのものではない。あくまでも、「まったくわからない」場合に使う方法である。

 たとえば、「汝(なんじ)」という文字がある。中国人にだって、面倒くさがり屋さんはいるから、同じ発音で画数の少ない文字で代用しようとする。それで、「女」を「汝」の意味で使う例が漢文ではある。
 漢文を読む場合、その文字本来の意味で前後関係が通じない場合には、同じ発音のほかの文字を考えて、前後関係がすっきりするものを採用して、解釈する。
 ここでは、どうしようもない場合に、音読みをして、「音(おん)」が近いものを選べばよい。100%ではないが、あてずっぽうで選ぶ場合の「4分の1」よりはましだ。

已 イ

1 焉 エン
2 乎 コ
3 耳 ジ
4 之 シ

 これで、日本語で考えても、母音が同じものは、「耳」「之」の2つに絞り込める。これだけでも、有効な手段であろう。同じように対処できる問題が10問あれば、5問は正解するのだから。
 さらに、「已」に「すでに・やむ」の読みがあり、「之」に「ゆく」の読みがあるということを知っていれば、まさか、別の意味とはいえ、正反対の意味のある文字が同じ意味になる可能性は低いのではないかと想像すると、「耳」を選ぶことになるが、結果的には、正しい。
 また、ひとつの大学の入試問題ばかりを解いていくと、その大学特有の「ひっかけ」のつくり方がわかってくるので、この大学では「みみ」と読むようなものが、むしろ正解であるということがわかるということもある。
 なお、「已」と「耳」は、韻(平水韻)と四声が同じだ。

 音(おん)が同じ漢字で代用するというのは、中国人にかぎらない。日本語でもある。たとえば、「歌麿」は「哥麿」と表記される場合もある。また、和歌山県の教育水準の高くはない社会階層では、ずいぶんと以前のことだが、「和歌山」を「和可山」と書くという例も見受けられた。和歌山市内に「ぶらくり丁」というのがあるが、「丁」は「町」を略したものだと思う(ちがうかもしれない)。
 ところが、ものごとには例外があるもので、「記録」の「録」がある。「記録」の意味から考えると、「録」が「金偏(かねへん)」なのはおかしいと感じないかな? 本来は「彔」(これは「録」の旁(つくり)の正字体(旧字体))であった。どういうわけか、音が同じで、別の文字である「録」が定着してしまっている。

 それはともかく、同じ読み方をする文字はどれかという問題に対して、自らの知識で正解に辿(たど)りつけないのであれば、音から判断して同じもの、あるいは近いものを選ぶという方法はそれなりの効果がある。
 ところが、ある生徒が、以上の説明のあと、こんなことを言った。
 「漢字の音で考えると正解できることがあるというのはわかったんですが、漢字の音が全部、わからないときはどうしたらいいんですか?」
 うーん、……どうしようもないなあ。

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和歌山県橋本市出身。世界文化遺産である高野山の麓です。
和歌山県立橋本高等学校を経て、早稲田大学第一文学部哲学科哲学専修卒業。
B型Rh+。天秤座。家紋は「丸に九枚笹」。
大叔父(おおおじ)は精鋭集団である帝国陸軍航空審査部所属で、「キ61(きろくいち)の神様」と呼ばれた坂井雅夫少尉。キ61は三式戦闘機「飛燕(ひえん)」のことである。

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