『アダルト・ピアノ』は、井上章一が41歳でピアノをはじめ、猛烈に練習して、そこそこに弾けるようになった奮戦記のような部分を含むものである。
もともと、ジャズが好きだということもあったんだろうけど、話をおもしろくするために、ピアノを始めた動機を、モテるからだということにしている。
まず、老人のあつまりで講演をおこなった際に、ピアノの演奏ができるじいさんがモテると知らされる。ついで、大阪のバーかどこかで、店のピアノを借りて、初老の男性がジャズピアノをやってみせたら、ホステスにモテていたのを目撃する。そこで、ピアノの練習を始めるわけだ。
女性にモテる男性は、一般にはつぎの3種類である。
音楽の上手な男性(ミュージシャン)
スポーツが得意な男性(スポーツ選手)
話術が巧みな男性(お笑い芸人)
だから、ピアノのできるじいさんがモテると指摘されても、そりゃあそうだろうなとしか思わない。
しかし、現役時代にどんなに素晴らしいスポーツマンであったとしても、80歳になれば、むしろ、スポーツをしていなかった人たちよりも、身体の衰えが激しいだろうから、高齢になってもモテつづけることはできなさそうだ。
また、お笑い芸人がモテると言っても、耳の遠いばあさんは、ことばが聞き取れないので、モテなくなる。
この2点から考えると、いつまでもモテるのは、楽器の演奏のできるじいさんとなるだろう。
だからといって、40歳からピアノを始めても、それほどモテるようにはならないような気がする。
バーのピアノでジャズを演奏してホステスにモテていた初老の男性に関しては、たとえば、2000年の時点で60歳だと仮定すると、1940年すなわち昭和15年生まれであり、昭和20年代に自宅にピアノがあったとすれば、相当な金持ちで、ずいぶんと「育ちのよさ」を感じ取れる。だから、ピアノの演奏だけで、ホステスにモテていたわけではなく、育ち・人柄など、ピアノの演奏以外のものを含めた総合評価としてモテていたのではなかろうか?
やはり、40歳を超えてから、ピアノを演奏するようになっても、モテモテ度はそれほど向上しないのではなかろうか?
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