2009年1月13日火曜日

なぜイングランド人はアメリカ英語の発音を馬鹿にするのに、オーストラリア英語の発音はそれほど馬鹿にしないのか?

 イングランド人はアメリカ英語の発音を馬鹿にする人が多いようなのに、オージーイングリッシュ(オーストラリア英語)の発音を馬鹿にしているところを見たことがなく、ずいぶんと不思議に思っていた。
 一方、アメリカ人はオーストラリア人の発音をものすごく馬鹿にする。
 これが不思議でならなかった。

 アメリカ人に「英語がうまいな」とよく言われる。これはまあ、あくまでの「日本人としては」ということであろう。それに、私はアメリカ人と話すときには徹底したイギリス英語で話すことにしている。それも中流の上くらいの発音で話すようにしている。
 そして、「たとえば、ドイツ人がきちんと子音を発音するのと較べると、日本語訛りが少しは残っているから、自分ではたいしたものではないと考えている」などと答えると、そんなときにアメリカ人は必ず、こう言うのだ。
 「いや、君の英語は、オーストラリア人の英語よりもはるかに素晴らしい」
 しかも、その上で、大笑いして、オージーイングリッシュの真似をするやつがすこぶる多い。アメリカ人が数人いるときには、そのまま、オーストラリア英語の発音の悪口になることが少なくない。アメリカ人って、こうなんだよなあ。

 もうひとつ、疑問に思うことがあった。
 アメリカ合衆国はもともとは英国の植民地だったのに、アメリカ発音に近い発音のイングランド人がずいぶんとわからなかった。英国の植民地だったのだから、イングランドのどこかの地域にアメリカ人のように話すイングランド人がいてもよさそうなのに、なかなか見当たらない。変だなあと思っていた。

 あるとき、リバプールLiverpool出身の英国人としゃべっていたら、彼はアメリカ人に多い発音でしゃべる。たとえば、patriot(愛国者)をイギリス人はふつう「パトリオット」と発音するのに、「ペイトリオット」と発音するという具合(関係ないが、パトリオットミサイルはアメリカの兵器なのでペイトリオットミサイルと呼ぶべきだと思っている)。イングランド人なのに、どうしてアメリカ風に発音するのかと訊いてみたが、「わからない。出身地の近所の人も家族もこう発音する」という。
 で、詳しく聞いたところ、リバプール出身といってはいるが、本当はリバプール近くの小さな村出身であるが、リバプール出身だというと、日本人女性が「あら、ビートルズの出身地ね」と喜んでくれるので、そうしているとのことで、今、両親はリバプール近くの村に住んでいるが、もともとは北アイルランド出身のアイルランド系なんだそうだ。リバプールには、北アイルランドに近いということもあって、少なからずアイルランド系住民がいるらしい。

 そうしたことがあったので、アメリカ発音はアイルランド訛りがベースになっているのではないかと考えていたが、きちんと論証した資料がいまだに見当たらない。
 書名は忘れたが、アメリカ英語の標準的な発音はアイルランド訛りがベースになっていると、なにかの新書に書いてあった。

 そこに書いてあったのは、こういうことだ。
 19世紀初頭にイングランド人に土地を奪われたアイルランド人は、みずからの食料としてはジャガイモを栽培していた。ところが、ヨーロッパ全域にわたってジャガイモの疫病(えきびょう)が蔓延(まんえん)した。アイルランドは、1845年から1849年にわたって、ジャガイモの疫病に襲われ、壊滅的な被害を受け、100万人以上ともいわれる餓死者(がししゃ)を出した。
 この時期に、100万人がアメリカ・カナダ・イングランド・オーストラリアに移住した。さらにその後の10年間でも100万人以上が移住した。
 その結果、アメリカには大量のアイルランド系移民が存在することとなった。もともと英語を話しているので、アイルランド訛(なま)りを直すことなく、アメリカ社会に入り込んだ。現在、22%のドイツ系移民に次いで、アイルランド系移民は15%という第2の集団である。
 現在の標準的なアメリカ発音はアイルランド訛りがベースになっているそうである。

 イングランド人がアメリカ発音を異常なまでに馬鹿にするのは、たぶん、ふだん、自分たちが強烈に差別しているアイルランド人の発音に近いものがあるからではないだろうか?
 その一方で、イングランド人はアメリカ英語に対するほどもオーストラリア英語の発音に嫌悪感を抱いていないようであるが、オージーイングリッシュって、ロンドンの労働者階級の英語というか、コックニーCockneyという方言というか、そういう階層の英語がベースになっているように感じているのだが、確証はない。

 で、結論。イングランド人が標準的なアメリカ発音を大いに馬鹿にするのは、日ごろ差別しているアイルランド訛りがベースになっているからであり、オーストラリア発音をさほど嘲笑しないのは、あくまでもイングランドの方言がベースになっているからであろう。確たる証拠はないが。

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和歌山県, Japan
早稲田大学第一文学部哲学科哲学専修卒業、「優」が8割以上で、全体の3分の2以上がA+という驚異的な成績でした。大叔父は競争率180倍の陸軍飛行学校第1期生で、主席合格・主席卒業にして、陸軍大臣賞を受賞している。いわゆる銀時計組であり、「キ61(三式戦闘機飛燕)の神様」と呼ばれた男である。苗字と家紋は紀州の殿様から授かったものである。

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