ホワイトボードにさまざまな色のマーカーで花の絵を描いた。ここでは絵は描けないので、文字で表現しよう。
花 花 花 花
花 花 花 花
花 花 花
「あくまでも50年以上も前の説明になるが」と前置きをしてから、つぎのように説明した。
上には花(の絵)が11輪ある。つまり、「花」ということばで指し示すことができる「もの」の数が11あるということである。
ここで「赤い」という修飾語を「花」につけて、「赤い花」とすると、この表現で指し示すことができる「もの」の数が3になる。
したがって、修飾するというのは、指し示すことができる「もの」の数を減らすことである。
こんな説明をしたわけだ。感心している生徒がいる一方で、こんな質問をされた。
「もとからいないもののときは、初めから数はゼロのままじゃないの?」
すごい質問だ。
たとえば、「ペガサス(天馬)」は架空の存在であって、実在しない。もとから指示対象はゼロだ。だから、「赤いペガサス」としても、指示できる対象はゼロのままだ。
そこで、“だから、50年以上も前の説明だって言ったじゃん”と思いつつ、「可能世界意味論というものがあってだな、可能世界というものを考えて……」と、詳しく説明しようと思ったが、質問した生徒が「まずい」という顔をした。どうやら、ややこしい話になりそうだと感じたらしい。それで、「きちんと説明すると、1週間かかってもうまく説明できる自信がないので、説明するのはやめにして、こう考えてみてはどうだろう? 頭に思い浮かべることができるものの数が減ることが修飾することだとしてはどうか?」と言っておわりにした。
それにしても、「もとからいないもののときは、初めから数はゼロのままじゃないの?」という疑問を即座に思いついた小学3年生は、もしかすると天才かもしれないと思った。
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